自分の栄光と比較されるシメオネ

監督は、負けなければ、よほどのことがない限り首は飛ばない。いい結果を出していれば、首を切られない。しかし、あまりに早く結果を残し、それまでの戦績がよかったがゆえに苦しめられることもある。アトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネ監督は、自分が築いた黄金期と比較されている。

今シーズン、アトレティコ・マドリードは開幕から11節で獲得可能な勝点33のうち21ポイントを手にした。悪くない数字だ。だが6勝3分2敗の序盤戦は、アルゼンチン人指揮官が就任してから最悪のスタートと地元紙『アス』は伝えている。

アトレティコ・マドリードがリーガを制覇した2013-2014シーズンは開幕11節で10勝1敗、勝点30だった。2012-2013シーズンは勝点28、2014-2015シーズンと昨シーズンは勝点23だった。

なぜ今シーズンは勝点数が少ないのか? 

アラベスと本拠地ビセンテ・カルデロンで引き分け、レガネスとのアウェー戦も引き分けに終わり、勝つべき試合で、4ポイントを取りこぼしたことが原因だと記事は分析する。またカンプ・ノウ(バルセロナの本拠地)、サンチェス・ピスファン(セビージャの本拠地)、メスタージャ(バレンシアの本拠地)といったリーガ屈指の難所でのアウェーゲームを終えての戦績なので悪い数字ではないフォローもしているが、昨シーズンよりもメンバーのクオリティも高く、また内容的にも“いいフットボール”をしているのに結果が出ていないのは心配だと報じていた。

ディエゴ・シメオネ監督がやって来る前のアトレティコ・マドリードといえば、たまにコパ・デル・レイか、ヨーロッパリーグを勝ち取るマドリード第2のクラブであり、常勝軍団ではなかった。チャンピオンズリーグの常連でもなければ、出場してもグループリーグを勝ち抜くことはまれだった。ましてやレアル・マドリード、バルセロナを差し置いてリーガを制覇するなんて、誰も想像できなかった。実際フェルナンド・トーレス、デ・ヘアといった有望な選手は、タイトルが狙える海外のビッククラブに籍を移していた。

そのクラブがアルゼンチン人指揮官の就任と共に右肩上がりに戦績を挙げ、今ではチャンピオンズリーグやリーガでは大本命ではないが優勝候補の1つに必ず挙げられるようになった。

獲得可能な勝点33のうち、21ポイントしか手にできていない。そんな常勝軍団だけが聞ける批評をアトレティコ・マドリードが受けることになるとは隔世の感が否めない。そして、チームをその位に押し上げた張本人であるシメオネ監督が、自分の好戦績に苦しめられるというのも皮肉なものだ。

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