なぜ、こんなところにクラブエンブレムが?

「アスレティック・ビルバオのクラブエンブレムがアリカンテの高速電車が停車する新しい駅の床にはめ込まれてる」と地元メディアが報じた。誰が、何のために埋め込んだのかはわからず、ミステリアスとして紹介されている。駅を建設した業者の誰かが工事中に勝手に床にエンブレムをはめた可能性が高い。鉄道管理会社は中立な立場であり、どのクラブにも属していない。トラブルが起きないように「床にはめこまれたエンブレムは上から被せて見えないようにする」と話している。  

セビージャでも今年1月に似たようなことが起きた。高さ180メートルのビル「ラ・トーレ・カハ・ソル」というビルの建設の現場で3人の工事作業員が、屋上にベティスのクラブエンブレムが描かれたプレートを勝手に設置したのだ。彼らは休憩中にその作業を行い、動画に記録し、そしてユーチューブにアップした。完成すればセビージャで最も高い建物となる屋上で彼らは誇らしげに「ベティスのエンブレムが街で最も高い建物の上にある」と話す。言わずもがな、市内にはベティスとセビージャがあり、両クラブはライバル関係にある。ベティスのサポーターでもある彼らは市内で最も高い建物に自分たちの愛するクラブのエンブレムを埋め込むことで、ベティスがセビージャよりも上にあると主張したかった。この動画はスポーツニュースでも取り上げられ、大きな反響があった。  

しかし、建設会社は彼らの行為を許さなかった。このニュースが紹介されるやいなや、動画に出演していた2人とビデオを撮影していた1人の計3人を停職処分とした。3人はそれぞれ違う会社に勤めていたが、三社とも同じ判断を下した。たしかに建物にベティスというイメージがつけば、セビージャファンはそのビルに寄りつかず、ビルにとっては大きな致命傷となってもおかしくない。  

クラブを熱狂的に愛するサポーターがいるからこそ、濃密な空間がスタジアムを包み、美しい試合が生まれる。ただし、クラブ愛と仕事を混同してしまうと、さすがのフットボール大国スペインでも職を失う可能性がある。

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