オーストリア人の欧州議会議員であり、ジャーナリストでもあるハンス・ペーター・マルティンはその日カンプ・ノウに観戦に出かけた。試合はUEFAチャンピオンズリーグ準決勝のバルセロナ対バイエルン・ミュンヘン。バルセロナがホームで0-3で惨敗してしまったゲームだ。マルティンはこのゲームで地元警察に不当な扱いをされたという報告をスペインのスポーツ紙『AS(アス)』に寄せた。
マルティンはチケットを買い、入場口33から入るピッチに近いシートでゲームを観戦していた。バイエルンに共鳴する彼はアウェーチームが先制点を決めると喜んだ。2点目が決まった時も同じように喜んだが、周りの観衆は席を立って喜ぶ彼に座るように言い、その後、警備係はシートからの退去を説得していた。そんな時だった。バイエルンが3点目を決めた。とマルティンは立ち上がって、マフラーを掲げた。すると何人かの警察がそのマフラーを奪い取り、席から階段のところまでつまみ出した。マルティンはその時に倒れ、携帯電話を失くした。彼はその間に財布から自分の職業を示すカードを出し、記者証も示した。しかし警察に身体をつかまれ、スタジアム内部の通路まで連れて行かれた。その間、警察には名前と警察バッジの番号を聞いていたが、彼らは何も答えなかったという。
その後、バルセロナの職員を見つけたマルティンは自分が受けた扱いを説明した。するとその職員は謝り、「ここの警察はそうなんです」と言った。そのコメントにマルティンはとても驚いた。警察にこういう行為が許されている。それは独裁時代を思い起こさせる、と彼は手紙に綴っている。
警察の対応が決して親切なものでなかったことは確かだろう。しかし、敵地でしかもホームのサポーターが多くいるピッチに席で、アウェーチームのゴールに大声をあげて喜べば、危険な事態に陥っていたかもしれない。それを事前に阻止するために警察がそう対応していた可能性もある。
アウェーで大げさに喜べばどうなるのか。欧州議会議員の人間はそんなフットボールの常識を知らなかったのだろうか。