”Joyel Rico de los Austrias”とは?-1

「ブラッディ・メアリー(血まみれのメアリー)」という異名で恐れられた君主が16世紀の英国にいた。メアリー=チューダー、後のメアリー1世である。彼女はヘンリー8世と彼の最初の王妃カタリーナ・デ・アラゴンの娘で、即位してからカトリックへの回帰を方針に掲げ、苛烈な反プロテスタント政策をとり、そのために300人にも及ぶプロテスタントを死刑した。そのためにつけられたこのあだ名が、後にウォッカをベースとするトマトジュースを用いた真っ赤なカクテルの名称の由来となった。

マドリードのプラド美術館にはアントニオ・モロの作成した彼女の肖像画がある。アントニオ・モロは肖像画の巨匠として16世紀ヨーロッパに名を馳せたオランダ出身の画家で、フェリペ2世統治下のスペインで宮廷画家を勤めた人物である。

プラド美術館にあるメアリー1世の肖像画

プラド美術館にあるメアリー1世の肖像画

肖像画の巨匠アントニオ・モロ

肖像画の巨匠アントニオ・モロ

元々メアリーは、従兄弟であるスペインのカール5世の許婚だったが、1554年に結局その息子フェリペ2世と結婚した。同年にフェリペ2世が英国の宮廷に彼女の肖像画作成のために派遣したのが、当時宮廷画家だったアントニオ・モロで、その時作成されたのがこの肖像画だった。

アントニオ・モロは非常に写実的に宝石やドレスを描写する画家で、黒と茶を基調とした抑えられた色調の絵画の中でメアリー1世の纏っている雅やかなブロケードのリアルさは人目を引く。しかし、この絵画の中で一番先に人の視線を捉えるのは、彼女が首からさげているペンダントではないだろうか。このペンダントトップは「Joyel Rico de los Austrias(ハプスブルク家の宝物」」という名で知れた、スペイン王族の宝だった。フェリペ2世が婚礼時に彼女に贈ったもので、世界で最も有名な宝石の一つである。

スペイン王族の宝Joyel Rico de los Austrias

スペイン王族の宝Joyel Rico de los Austrias

【Joyel Rico de los Austrias-2に続く】

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