スペインとポルトガルの国境付近に位置するポンテベドラ県モラサ半島の山々に住む野生の馬が、山中に仕掛けられた罠に次々と掛かってしまっていることが問題になっている。
同地方の山の警備を担当する組織によると、これらの罠は、馬の所有者によって仕掛けられたもので、馬の行動範囲をコントロールするためのようだが、これでは馬が多発する山火事や車との接触事故を避ける妨げになり、馬に重症を与える可能性もある。これに対し、「罠は馬を虐待している」として州政府が「違法」との条例を出している。
なぜ所有者のいる馬が野生馬として罠にかかっているのだろうか。また、馬に罠を仕掛ける理由は何だろうか。
「所有者のいる野生馬」とは、スペイン北西部の山々に現在も生息する野生馬で、特にガリシア州で多く見られる。その数はおよそ2万頭以上とも言われ、そのほぼすべてに“一応”所有者がいる。“一応”と言うのは、これらの馬は年中野生状態で生活し、毎年自然に出産するからだ。馬の所有者たちは1年に一度、7月から8月にかけて周辺地域の山に暮らす馬を全て集め、伸びきった馬の鬣を刈り、所有する馬が産んだ仔馬にマーキングをする。同時に、馬の衛生管理も行うこの行事は、「ラパ・ダス・ベスタス(家畜の毛刈り)」という名前の村のお祭りとして知られていて、闘牛ならず「闘馬」とも言える。(「ラパ・ダス・ベスタス」についての詳しい記事はこちら)
また、「馬に罠を仕掛ける理由」については、野生馬が村におりて農作物を荒らすということが多発したため、馬の行動範囲をコントロールすることが目的とのことだ。多発する馬が闇売買にかけられることもあり、厳しく禁止されているものの問題になっているのも事実である。