携帯電話アンテナ塔で住民に健康被害

スペイン、カナリア諸島(アフリカ大陸北西岸)の一つ、ゴメラ島の西に位置するバジェ・グラン・レイという村に設置されていた「携帯電話のアンテナ塔」が周辺住民に健康被害を与えているとして問題になっている。

バジェ・グラン・レイで生まれ育ったラモスさんは、16歳と7歳の子どもたちが、携帯電話のアンテナが放つ電波が理由で甲状腺癌を患ったと訴えている。その他にも多くの住民が同様の健康被害を受けていた。これらを受け、ようやく昨年末にアンテナ塔の機能が停止された。住民の訴えが起きて5年後の対応だ。電波塔停止により、周辺住民は「睡眠しやすくなり頭痛も減った。」と話している。

対応に長期間かかったのは、住民が訴えている症状とアンテナの因果関係を示す医師の診断書などが無いために、役所や電力会社などが「まだ正確な確認が出来ていない」として今日まで一切の対応を行って来なかったからだ。また、州政府、役場、議会の三者間での案件の「擦り付け合い」で事が進まず、アンテナ塔停止に5年間も費やす事となった。

新アンテナの設置場所は依然として決まっておらず、村には3ヶ月も携帯電話の電波がない状態だ。地元住民や島を訪れる観光客は新アンテナの早期建設を望むものの、村から離れた安全な場所への設置を求めている。村を見渡せるテゲルヘンチェ山に新たに建てるのが最適との案が出ており、これにカナリアの電力会社は了承していものの、携帯電話会社側が、アンテナまでのアクセスの不便などを理由に渋っているようである。

バジェ・グラン・レイはカナリア諸島ゴメラ島の観光地で人口は5千人程度。1970年代まではバナナの生産や漁業が主な産業だったが、近年は観光客誘致に力を入れていて、主産業は第3次産業となった。ドイツ人観光客が多く訪れることで有名だ。

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