カタルーニャ州で進むカタルーニャ語の使用義務

カタルーニャ州タラゴナ県は公共医療機関で働く職員に対して、同州の公用語である「カタルーニャ語」の職務中の使用を義務付けた。

スペインには複数の公用語が存在することは良く知られている。全国共通であるスペイン語は「カスティジャーノ」と呼ばれ、マドリッドなどが位置するスペイン中央部カスティージャ地方の言語という意味である。そして、バルセロナが州都のカタルーニャは、地中海とピレネー山脈に面しており、イタリア語やフランス語に近い「カタルーニャ語(カタラン)」が話される。逆に大西洋に面したスペイン最西端のガリシア州は歴史上ガリシア国がポルトガルを一時的に支配していたことなどから、ポルトガル語にとても似た「ガリシア語(ガレーゴ)」が公用語として話される。これらの言語はスペイン語の方言ではなく、カスティジャーノやフランス語、イタリア語などと同様にラテン語から派生したれっきとした「言語」と認識されている。

なかでも異色なのがバスク地方の公用語である「バスク語(エウスカラ))だ。バスク語はラテン語から生れたものではなく山岳地帯に住んでいたバスク民族の独自の言語なので、(他の公用語と異なり)スペイン人でも理解することは困難だ。

このように、スペインの中で独自の文化と言語を持つ地方では民族主義意識が強いのも事実で、特にバルセロナやビルバオなどの首都マドリッドに匹敵する産業力を持った都市があるカタルーニャやバスクでその傾向は強く、スペインからの独立を望む人は多い。例えば、現在は完全なテロリスト集団になったETA(バスク地方の独立を目指す組織)はバスク地方の過激派民族主義組織と知られ、カタルーニャ州で昨年廃止された闘牛はスペインとカタルーニャを区別する意識表示だ、と考えている人も少なくない。

ところで、タラゴナの公共医療機関で義務づけられている「カタルーニャ語」の使用だが、これはスペイン新政府が行う医療機関への予算削減に抗議しての再義務化と思われ、政治上の問題と見られている。実際に病院等に配布された10数ページの議定書を作成したのは、現在のタラゴナ県の保険局長でCIU党(集中と統一)のジョセップ・メルカデ議員だ。

保守派の民族主義連合政党として知られるCIU党の同議員は、議定書でカタルーニャ語の使用義務の場面の例として、「電話中も含め職員同士の会話や患者もしくはその家族など第三者との会話」としている。もし、医者と患者との間で患者がカタルーニャ語の理解に苦しむようなら医者は、1.「カタランを理解できますかと質問する」、それでも理解出来なかった場合は2.「図や物を使って説明する」、最後に3.「スペイン語を使用できる」と、とことんスペイン語を拒否している。

しかしながら、スペイン国内で共通に理解できる言語は当然スペイン語なので、「特例」としてカタルーニャ州の病院に初めて来た患者などに対しては、「命に関わること」としてスペイン語での対応が認められている。

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