リーガ・エスパニョーラは序盤戦真っ只中だ。バルセロナが開幕から6連勝で、ホームで勝てない昨季王者レアル・マドリードに勝点差7をつけている。スーペル・コパでレアル・マドリードが結果でも内容でもバルセロナに完勝したことで、優勝候補筆頭はレアル・マドリードで、ネイマール退団の余波を受けるバルセロナは危機的状況とほんの1カ月前は言われていたが、蓋を開けてみたらそんな戦前の予想とは全く違う状況で序盤戦が進んでいる。
優勝争いだけではない。昇格組のヘタフェ、レバンテ、ジローナは勝点を積み重ね、昨季のコパ・デル・レイのファイナリスト、アラベスとマラガが降格圏内にいる。開幕して間もないので、順位は節ごとに大きく変動する。とはいえ、昇格組が1チームも降格圏内に入っていない事実には少し驚かされる。
今シーズンは試合中に驚いた、もしくは悲観した観衆が例年に比べて多いのではないだろうか。スペイン紙『エル・パイス』は「開幕5節でPKを宣告する笛は12回吹かれたが、その内7本は不幸なことに外れた」と伝えている。PKはほぼ得点と同義だ。ボールを蹴るキッカーが圧倒的に有利なはずだが、今シーズンのリーガを見るとそうでもない。同記事ではこう続いている。
プレミアリーグでは開幕してから、9月24日までにPKが8本あり、7本が成功した。イタリアでは22本のPKのうち、20本が得点になった。ブンデスリーガでは12本のPKのは全て決まっており、フランスでも21本中19本が決まった。このように他国では、相変わらずPKの成功率が圧倒的に高いが、スペインは失敗の数の方が多い。
バレンシアやセビージャで活躍した元スペイン代表ゴールキーパー、パロップは「PKの失敗の多くの責任はゴールキーパーにある」とコメントし、エスパニョールのゴールキーパーコーチで元カメルーン代表ヌコノは「今日において、多くの情報を持っている。PKがどこに蹴られるのか。そういう全てのプロフィールは知っている」と語り、PKだけでなく、コーナーキックやフリーキックなど全ての情報を把握していることが要因だと考えている。
2011-2012シーズンのリーガのPKの成功率は78パーセント、2012-2013シーズンは84パーセント、2015-2016シーズンは71パーセント、そして昨シーズンは72パーセントだった。今シーズンは開幕5節で41パーセントだ。
今シーズンの7本の失敗の内、ゴールキーパーがセーブしたのが6本で、ジローナのグラネイだけがセビージャ戦で手にしたPKを枠外に外した。ヌコノはこうコメントしている。
「偶然ではない。いつもその陰にはトレーニングがある」
分析したデータを元に、日頃のトレーニングでゴールキーパーが練習をこなしているからこそ、PKのセーブ率が向上したのだろう。PKはほぼゴールと同じ意味という常識は、今後覆ることになるかもしれない。
ゴールキーパーは、各キッカーの特徴を把握しているが、はたしてキッカー側は対峙するゴールキーパーの特徴を、ゴールキーパーほど情報として頭に入れているのだろうか。スペインではまだ導入されていないが、審判がビデオで自分のジャッジを確認する時代だ。今後はPK、フリーキック、コーナーキックなどさらにデータに用いた情報戦がさらに活発になっていくに違いない。