スペイン国外で“エル・クラシコ”が初めて開催されたのは、スペイン紙『アス』によれば、1982年5月31日だった。ベネズエラで開かれたルイス・エレーラ会長カップの3、4位決定戦で、観衆は700人しか集まらなかったと記事は伝えている。ゲームはレアル・マドリードが1-0で勝利し、得点者は後にスペイン代表にワールドカップをもたらした名将ビセンテ・デルボスケだった。そして今夏、アメリカのマイアミで国外で史上2度目となる“エル・クラシコ”が行われた。
普段スペイン人はプレシーズンマッチに注目しない。しかし、“エル・クラシコ”となれば、やはりこれまでの親善試合とはちょっと違うようだ。思わぬところで批評が起きている。
スペインでは土曜日から日曜日に日付が変わったばかりの深夜2時にキックオフされたが、ゲームは民放で生中継された。2005年に設立されたクアトロという民放のテレビ局だ。その局の看板の1人であり、試合の実況を務めたマヌ・カレーニョというスポーツキャスターが批判の対象となった。批判と言っても主にその矢はカタルーニャ州から飛んでいるようだ。
マヌ・カレーニョは、クアトロではお昼のスポーツニュース番組『デポルテ・クアトロ』を担当し、深夜にはスポーツラジオ番組のMCを務める。ワールドカップ、欧州選手権などスペイン代表の重要なゲームでもテレビ実況を任される現在国内で最も認知度が高いスポーツキャスターだ。マイアミでの“エル・クラシコ”の彼の実況に、特に多くのバルセロニスタが不快感を示している。というのも、生中継されたゲームで、レアル・マドリードが得点を決めた時は「ゴール」という単語を気持ちを込めて叫んでいた。特にアセンシオが2-2となる同点弾を決めた時は「ゴール!! ゴール!! ゴール!!」と感情が込められていた。一方で、バルセロナのラキティッチやピケの得点シーンでは「ゴール」という単語が彼の口から出てこなかった。レアル・マドリードの得点が決めた時に比べれると少し控え目に話し、「バルセロナの2点目が決まった」「ピケ!! ボールが中には入った」と言うように「ゴール」という単語は発せられなかった。
この実況に対して「バルサが得点を決めた時には奇遇なことに『ゴール』と叫ばなかった」「マヌ、プロフェッショナルでなければいけない」と批評され、実況者はマドリディスタであり、プロフェッショナルであるにも関わらず、彼の志向、ひいきのチームが思わずコメントに滲み出ているとSNS上で指摘された。実況席に座る前に、自分が好きなユニフォームの色はまず家に置いてくるべきだという批評もあった。このような記事をバルセロナ寄りのスポーツ紙『ムンド・デポルティーボ』のホームページが伝えていた。
スペイン代表のゲームでは、相手チームの得点が決まった時には明らかにトーンを落として、伝えていたが、彼に批評が起きたという記事が書かれた事はない。またヨーロッパリーグ、リーガのゲームでも実況しているがそんな指摘は目にしたことがない。実況に批判が集まるなんて、さすがスペインを2分すると評される“エル・クラシコ”だ。