地元紙を読んでいると、スペインのメディアのデータの豊富さに驚く。同時にその数字にこだわる執念が紙面からも伝わってくるようだ。物事をアバウトにこなすスペイン人が多い中で、誰がこの詳細なデータを調べているのだろう。テレビ放映でも、必ず各選手のデータを紹介する。
たとえば3月19日に行われたバレンシア戦で、メッシがジエゴ・アウヴェス相手にPKを決めた。その得点はリーガにおいて、メッシがPKで決めた44点目だった。メッシの数字だけでは終わらない。さらにメッシよりもPKでゴールを奪っているのはクリスティアーノ・ロナウド(58得点)、ウーゴ・サンチェス(56得点)、ロナルド・クーマン(46得点)の3人しかいないと補足がつく。
PKの得点は、ジエゴ・アウヴェスからメッシが奪った通算20ゴール目だった。メッシはジエゴ・アウヴェスと対峙したPK5本のうち4本を決めている。そしてジエゴ・アウヴェスはメッシが最も得点を奪っているゴールキーパーで、この試合の2得点を含めて、17試合21得点と相性がいい。
1つの得点を取ってみても、リーガの歴史から、個人対個人の記録まで実に多くの数字を列挙する。また過去の記録を紹介することで、ウーゴ・サンチェスやロナルド・クーマンといった偉大な功績を残した名手が、彼らの現役時代を見たことがない若い世代にも受け継がれていく。
その一方で詳細なデータは、時に選手を苦しめる。
たとえば、バレンシアのイタリア人ストライカー、ザザはバルセロナ戦までに10試合672分プレーし、2得点しか奪っていなかった。1得点に336分を費やしており、バレンシアの元ストライカーで、昨夏にバルセロナに移籍したパコ・アルカセルよりも得点率が低いと批評されていた。パコ・アルカセルは540分と出場機会が少ないながらも、2得点を決めており、270分に1得点を決めていた。
バレンシアからバルセロナに移籍したポルトガル代表アンドレ・ゴメスは、いまだに新チームに適応していないと根拠を持って、批判された。昨シーズンは、1試合平均43,1本だったが、今シーズンは1試合平均35,6本で、7,5本もパスの本数が少ない。適応できていないのは、数字からも読み取ることができるという論調だった。
バルセロナ対バレンシアの1戦からいろんな数字を挙げたが、どのチームであろうとどのゲームであろうと、地元メディアは詳細な数字を羅列し、いろんなアングルから試合を分析する。
選手も、チームも数字を出されての説得力のある批評ゆえに耳が痛い。と同時にそうやって厳しく求められるがゆえに進化しなければならず、高い競争力が身についていくのだろう。