時代が変えたバルセロナの信条

人の気持ちは移り変わり易い。昨シーズン3冠を達成しようとバルセロナのようなビッククラブの指揮官を務める人間は、たとえ過去に偉大な実績を残そうと、結果が出なければすぐに叩かれる立場にある。試合は世界中で生中継され、会見でのコメントが一瞬にして、世界中に伝わる現代で、人々は、かつてに比べて辛抱できなくなっているのかもしれない。

どんな小さいなことでも、批評できるところがあれば、メディアは見逃さない。8節ラージョ・バジェカーノ戦でバルセロナはブラジル代表ネイマールの4得点など5-2で勝利した。ネイマールが負傷中のリオネル・メッシの代役を果たした、と称える一方、バルセロナがボールポゼッションでラージョ・バジェカーノに敗れたと指摘するメディアがあった。

3年前のヘラルド・マルティーノが指揮をしていたバルセロナはラージョ・バジェカーノにボールポゼッションで敗れた。当時のアルゼンチン人指揮官は5年ぶりに相手チームにポゼッションを上回れたことを問われると、「勝っただろう?」と返答した。

ルイス・エンリケも同じ姿勢だ。ルイス・エンリケは昨シーズン、ラージョ・バジェカーノ戦でイニエスタとシャビ・エルナンデスを起用し、ポゼッションを高めて勝利を目指した。今シーズンはイニエスタは負傷中で、シャビはもうチームにいない。ゆえに違う戦い方を選択した。結果、バルセロナは44,4パーセントで、マドリードのチームは55,6パーセントだった。そして14本のシュートを打ったのに対して、ラージョ・バジェカーノから22本のシュートを浴びた。

ルイス・エンリケはそのデータに何の感情も抱いていない。記者会見で「何を修正しなければならないんだ?」「私たちが何ポイントあるかを知っているかい?」とコメントした。また「ポゼッションが全てではない」とも付け加えた。
 
バルセロナはボールを保持し、自分たちが常に試合の主導権を握り、ヨハン・クライフの言葉である「美しく勝利せよ」をピッチで体現することを信条とするクラブだ。しかし、実際はクラブ、指揮官、サポーターは何よりも勝利にプライオリティを置くようになった。

昨シーズン3冠を達成したチームに「カウンターばかりで、バルセロナのフィロソフィーはどこにいったんだ?」と声高に訴える役員もサポーターもいない。皆、勝利に酔いしれていた。

勝利が全て。世界的に「美しく勝利せよ」というバルセロナのイメージが浸透しているが、辛抱強くない今の時代がクラブのポリシーをも変えてしまったようだ。バルセロナのポリシーはレアル・マドリードのそれとあまり変わらなくなってしまった。

ロマンを追求する時間を、今の時代は誰も与えてくれない。

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