近年のバルセロナにおいて常に補強しなければならないポジションがセンターバックだった。バルセロナは負傷がちだったプジョルを待ち続け、マスチェラーノをセンターバックに起用することでここ数シーズンはセンターバック不在をごまかしてきた。毎夏チアゴ・シルバ、フンメルスら世界最高峰のセンターバックの名前が獲得候補として、地元紙を賑わせていたが、結局ひとりも獲得してこなかった。
今夏にやっとバルセロナはセンターバックをひとり獲得する。バレンシアのマテューだ。フランス人センターバックは上背があり、ヘディングが強く、スピードもある。リーガ屈指の優秀なセンターバックであることに疑いの余地はないが、人々はまずその値段に首を傾げる。今年31歳になる元フランス代表に、バルセロナは2000万ユーロ(約27億円)を費やしたのだ。来年6月にバレンシアとの契約が切れ、フリーとなる選手にしては高い。さらにバレンシアと契約更新する前の昨夏の段階では半額で獲得できたという事実もある。センターバックの補強が明らかに必要なバルセロナはバレンシアに足元を見られ、一斉移籍金の値下げはされなかった。
チェルシーに移籍したセスクもそうだったが、バルセロナのサポーターは高額な移籍金で獲得した選手には手厳しい。その金額に見合ったプレーを示さなければ容赦はしない。マテューの獲得にクレの大多数は賛同していない。センターバックでハイレベルなパフォーマンスを示し続けなければ、カンプ・ノウの観衆から無数の野次が飛ぶに違いない。
マテューはバルセロナに選手になってから初めて『ムンド・デポルティーボ』のインタビューに応じた。その記事の締めくくりに「タバコは吸うんですか?」と質問され「僕は吸いたい時に吸う」というコメントが掲載された。ピッチ上で全てうまく行っている時はいいが、低調だった時に高額な移籍金やこの記事のコメントで裏付けられた喫煙者といったイメージが必要以上にサポーターの批評を誘発する。マテューは入団時に「バルセロナは世界最高のクラブだ」とコメントしたが、世界最高のクラブは世界で最も要求の厳しいクラブという同義語でもあるのだ。