元同僚と比較され続けるルイス・エンリケ

バルセロナの新監督ルイス・エンリケ。現役時代はバルセロナでスターだった彼は当然ながらグアルディオラと比較される。プレシーズンが始まったばかりにもかかわらず、監督としてもバルセロナに黄金期をもたらしたグアルディオラとルイス・エンリケの共通項、もしくは相違点が多くの記事のテーマにされている。  

たとえば、スター選手の扱いについて。グアルディオラはチームに規律を取り戻されるため、当時バルセロナでスターだったロナウジーニョ、デコの退団を敢行した。エトーも翌シーズンに退団している。彼らは能力は依然として高かったが、個性が強く、チームワークを重んじるグアルディオラはあっさりと放出した。ルイス・エンリケは違う。ピッチ内外で絶大な影響力を持つスターだが、ピッチではかつてほどのパフォーマンスを示せていないメッシやシャビをチームの柱として考えている。改革を断行するために、それまでのクラブの顔であったスターを切り捨てるという選択は今のところしていない。  

スターの扱いは違うが、若い選手を積極的に起用するという考えは両者に共通しているようだ。グアルディオラは、当時若くバルセロナBにいたペドロ、ブスケツをトップチームに昇格させ、積極的に試合で起用した。彼らは今ではバルセロナ、スペイン代表で欠かせない戦力となっている。ルイス・エンリケも同じだ。昨シーズン指揮したセルタでもそうだったが、年齢に関係なく、実力があれば若い選手を起用してきた。今シーズンはデウロフェウ、ラフィーニャといった今後のバルセロナを担う若いタレントをルイス・エンリケが開花させるだろうと期待されている。  

両者の比較はチームマネジメントや起用法だけではない。たとえば、地元紙『ムンド・デポルティーボ』は両者の就業時間を比較する。バルセロナはプレシーズンの時期、9時30分からトレーニングを始め、午後にもトレーニングを行う。ルイス・エンリケはトレーニングの2時間前の7時10分から30分の間にはトレーニングセンターにやって来るのがルーティンとなっている。テクニカルスタッフの誰よりも早くオフィスにやって来て、スタッフが集まるとトレーニング内容の確認、準備を始める。トレーニングが終われば、自分のオフィスにこまってビデオ研究。グアルディオラは当時8時20分にトレーニングセンターに来ており、ルイス・エンリケは彼よりも朝が早いと地元紙は伝えている。まるで「グアルディオラよりも早起きということはそれだけ仕事熱心だからきっと戦績も彼以上のものを残すのでないか」と言いたげだ。地元紙は新監督のイメージをポジティブに伝え、クレの期待を煽りたいのだろう。グアルディオラもよくビデオを見ることに没頭していたと言われるが、ルイス・エンリケも時間を忘れてしまうほどのめり込むそうで、トレーニングセンターから自宅に帰るのもスタッフの中で大抵1番最後だという。  

どんな些細なことでもグアルディオラと比較されるルイス・エンリケ。バルセロナでクラブ史上最大にして、最高の成功をおさめたかつての同僚との比較はルイス・エンリケにとって重荷以外の何物でないだろう。

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