ネグレドのタトゥー

ワールドカップに向けて、スペイン国内では“フォワードの3枠”について議論が始まっている。ビセンテ・デルボスケは、これまでのワールドカップや欧州選手権のメンバー構成を見るかぎり、フォワードを3人連れて行っている。2014年のワールドカップには、スペイン代表として誰が召集されるのか。大きな話題の的となっている。というのも、スペインには今優秀なフォワードが揃っており、メンバー争いが激化しているからだ。スペイン代表を支えてきたトーレス、ビジャ。ワールドカップ予選で活躍し、イングランドでも活躍を続けるネグレド。スペイン国籍を取得し、アトレティコ・マドリードを牽引するブラジル人アタッカー、ジエゴ・コスタ。イタリアのユベントスで本領を発揮しつつあるジョレンテ。ゴールの嗅覚が鋭いソルダード。と、候補者は多い。

地元ジャーナリストがラジオなどでスペイン代表フォワードについて激論を交わしているが、どのジャーナリストも迷わず推しているのがネグレドだ。ワールドカップ予選では点取り屋としてだけではなく、前線のターゲットとして機能。パスワークが武器のスペインにとって、周りの選手を活かすポストプレーの評価は高い。なおかつ、マンチェスター・シティに移籍してからも相変わらずのパフォーマンスを示している。  

ネグレドは、タクシー運転手のホセ・マリアの三男としてマドリードに生まれた。兄の2人も現役選手として2部B、3部でプレーしている。末っ子はスペイン代表に選出されるなど、兄弟の中で最も大成したわけだが、父親は「(三男は)最も幸運に恵まれたから」と話す。ネグレドの父親は現在60歳で、タクシー運転手として1日12時間働き、月に1,500ユーロの給料を稼いでいる。ネグレドが運転免許を手にする20歳まで、タクシーで息子をトレーニング場まで送り届けていた。レアル・マドリードのトレーニング場にもタクシーで送り迎えをしていた。週末は(タクシーの)最も稼ぎ時だが、3人の息子たちの試合にも付き添った。  

今ではネグレドはマンチェスター・シティで月に35万ユーロの給与をもらっている。経済的にとても余裕のある息子を持つ父親はいつ仕事を辞めても暮らしていけるが、1日12時間の仕事を辞めない。「息子は息子」と話し、「何もしなかったら退屈でしょうがない」と父ホセ・マリアはその理由を話す。また、息子3人が巣立った今、収入はこのままで十分だそうだ。ネグレドは、イングランドのプレスに父親に仕事を辞めるように相談したけど不可能だった、と話している。彼はそんな父親を誇りを持ち、家族への感謝をいつもゴール後に示している。ネグレドの腕には「CRJ」というタトゥーがある。それは、家族それぞれのイニシャルだ。ネグレドはゴール後に必ずこのタトゥーにキスをする。  

はたしてブラジルの地でネグレドは何度、家族に感謝のキスをするのだろうか。彼が家族に感謝すればするほど、スペインは歓喜に包まれることだろう。

ページトップへ