今回の発見は、メトロポリタン美術館所属のヨーロッパ絵画専門家のキース・クリスティアンセ(Keith Christianse)氏と絵画保存部責任者マイケル・ギャラガー(Michael Gallager)氏の共同研究で実現した。
その経緯は以下の通り。
メトロポリタンでは今年、同美術館が所有するスペイン絵画コレクションの目録を再編成することになっており、それに際してクリスチャンセ氏がこの問題の絵と改めて対峙した時、彼の中に25年間巣くっていた疑惑が再浮上した。それは、「名もない弟子の作品にしては出来すぎている」という事だった。その疑問をギャラガー氏に投げかけたところ、ギャラガー氏は絵を洗浄する事を提言。洗浄作業が終わってみると、幾重にも塗り重ねられた絵の具の層の下から、新たなパレットが現れ、元々作品は別の体裁をしていた事が判明。2人は検討の末、これがベラスケス本人の作品である、という結論に行き着いた。両氏はこの説と絵画を、アメリカのベラスケス絵画のオーソリ的存在であり、ニューヨーク大学美術研究所の教師でもあるジョナサン・ブラウン氏に提示。すると、ブラウン氏は「今まで私の目と鼻の先にあったというのに!」と驚きを示し、これがベラスケスの絵画であるとお墨付きを与えたのだ。
メトロポリタンの発表を受けて、マドリッドのプラド美術館はこの福音を祝福している。実際プラド美術館にもこの絵が貸し出しされ、2013年1月27日まで同美術館で一般公開されている。
モデルの男性が誰なのかは判らない。この男性が「ブレダの開城」に描かれているベラスケスの自画像に似ていることから、この絵が自画像ではないかと指摘する専門家もいる。