メトロポリタン美術館でベラスケス発見!-1

9月に事件が起きた。N.Y.のメトロポリタン美術館で「ベラスケスの描いた絵」が発見されたというのだ。ベラスケスは17世紀スペインを代表する画家。宮廷画家に招聘された事を足掛かりに廷臣に昇進、徐々に立身を重ね、終いには王宮配室長という要職に就くなど、異例な大出世を遂げた人物でもある。彼のステータスは、同時に絵画そのものの社会的地位の向上をもたらしたが、廷臣として多忙だったため多作家ではなかった。彼の作品は120点ほど現存するだけで、彼の絵が1つ発見されるだけでも大事件と言える。

問題の絵は、「男性の肖像画」という表題の習作(68×55cm)で、美術品収集家だったジュールス・バッヘ(Jules Bache)がある商人から買い取り、それを1949年にメトロポリタンに寄付。それ以降、同美術館で展示されていたものだ。作品は当初ベラスケスのものと見なされており、巨匠による銘もあった。

しかし、1963年、絵画に一大事が起こる。ホセ・ロペスが著書の中で、この絵画は「ベラスケスではなく、彼の弟子が描いたものだ」と言明したのだ。後にこの考えが支配的になり、メトロポリタンも作品脇に掲示されていた札の作者欄を「ベラスケス」から「ベラスケスのワークショップ」に変えてしまったのだった。

それから月日が流れ、いつしか作品のサインが消え失せ、作品の劣化とそれにともなう修復が繰り返され、絵の表面には、黒ずんだニスや、より古く見せかけるために作為的に塗られた絵の具の層や、修復のために塗られた絵の具の層が幾層にも重なり、もうこの絵にベラスケスの筆遣いを見とめる事も出来なくなっていった。しかし今回の洗浄作業を経てオリジナルが甦り、「ベラスケス再発見」に至ったというわけだ。

最近発見された肖像画

最近発見された肖像画


【メトロポリタンでベラスケス発見-2へ続く】

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