一対のミイラの正体は・・・?ミイラ検証。結果はいかに?(1)

サン・プラシド修道院のリフォーム工事中に発見された一対のミイラが、「ベラスケスとその妻のものではないか」、という仮説が立てられた。このミイラは、男女のカップルで、17世紀のものらしかった。ミイラの年齢もベラスケスと彼の妻の死亡した年齢に符合している。男性ミイラの服装も、ベラスケスが埋葬されたときに身につけていた服装に似通っている。この一対のミイラは、関係者の期待が高まる中、さらに詳しい検査のため、マドリードのコンプルテンセ大学へ運ばれた。

仮説が立てば、次はその正否の検証ということになる。さて、どのようなような方法で、「このミイラがベラスケスであるか否か」、立証できるだろうか?

3つの実証案が挙げられた。
①ミイラの遺伝子とベラスケスの末裔の遺伝子を比べる方法。
②ミイラの指紋と、プラド美術館が所蔵する「ブレダの開城」の絵の表面に残されたベラスケス本人のものとされる指紋と比べる方法。
③骨にどれだけの鉛が蓄積されているかを調べる方法。

③の案は、骨にどれだけの鉛が蓄積されているのかを調べれば、このミイラが以前、鉛を扱う職業に就いていたか否かがわかるだろう、という目論みからだった。というのは、鉛は皮膚を通じて人体に進入し、骨に蓄積していく性質がある。チューブに入った化学合成の絵の具が登場する以前は、絵の具は画家や彼らの弟子によって混ぜ合わされいた。ピグメント(色素)は鉱物や植物に由来するもので、その一つが人体に有害な鉛であった。画家の中には鉛中毒に罹るか、そこまでいかないにせよ骨に鉛を蓄積させてしまう者が多かった、という経緯に因る(※関連ニュース:『世界の著名芸術家が患った職業病』)。

しかし、この検査は「不確定」つまり、「どちらとも言えないという」結果で、空振りに終わってしまった。

(次回に続く…)

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