「ラス・メニーナス」の作者の墓はどこにある?

「墓マイラー」とは、「著名人の墓参りを趣味とする人」と定義される比較的あたらしい造語で、『現代用語の基礎知識』にも登録されている。ベラスケスは、「ラス・メニーナス」を描いたスペインを代表する画家。スペインへやってくる「墓マイラー」は無論、ベラスケスの墓も巡礼したいと思うことだろう。しかし、それは叶わない。なぜなら、彼の墓の正確な所在がわからないからだ。

(マドリードの)王宮の近くにあるラマレス広場には、一本のトスカーナ調のシンプルな円柱と、それを支えるポディウム(基壇)と、その先端を飾るサンティアゴの十字架から成る質素なモニュメントがある。これは、「ベラスケスの遺体がこの辺りのアスファルトの下に埋まっている可能性がある」ことを示している。

1660年にベラスケスは没した。サン・フアン・バウティスタ教会で豪華な葬儀が営まれ、彼の棺は同教会に収められた。

19世紀初頭、ジョセフ・ボナパルトはスペイン王であった頃、王宮周辺に密集する荒廃した教会を解体すべしと勅令を発布した。解体にともない教会の財産を没収したことで、逼迫していたスペインの国庫は潤い、いくつもの教会が広場に姿を変え、ジョセフには“Plazuela” というあだ名がつけられた(”plaza”:広場に“zuela”の接尾辞を足し、縮小辞にして軽蔑のニュアンスをこめている)。その時、取り壊された教会の一つが、ベラスケスが葬られていたサン・フアン・バウティスタ教会である。教会解体の際、ベラスケスの墓があった場所が記録されなかったため、今となっては「ここら辺にあった可能性がある」ということしかわからない上、これとは別の仮説を唱える専門家もいて、はっきりした事は何もわかっていない。

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