マドリード最古のホテル 閉館へ

近年、大きな不況の波が押し寄せているマドリード。ここ数ヶ月、観光業にも例外なく多大な影響を及ぼしているようだ。

先週、1886年創業のマドリード最古の老舗ホテル、オテル・イングレス(Hotel Ingres)がその120年以上もの長い歴史に幕を閉じた。3世代以上にも渡る家族経営だったこの3つ星ホテルは、マドリードの文化、娯楽、商業の中心であるプエルタ・デル・ソルから250m、歩いて数分の所にあり、どん底や秋といった日本人経営の日本食レストランも軒を連ねるエチェガライ通りに位置していた。

このホテルは数々の歴史で彩られていた。スペイン議会の代議院(国会の下院)に近いこともあり、これまで多数の政治家たちが宿泊していた 。また、数々の芸術家も訪れている。

フィリピン独立の英雄、ホセ・リサールもこの宿の常連であった。そのため、このホテルのサロンは彼の国の独立の一部分として受け入れられていたとのことだ。

閉館理由はいろいろあるようだが、特に観光客減少によるホテル需要が減ったことで勃発した価格戦であるとのことだ。ホテルの正規料金はシングル80ユーロ、ダブルで125ユーロだったが、外資やチェーンといった大きな相手には太刀打ちできず、収益も落ちていき、閉館へと追い込まれていったようである。ここ数ヶ月の間にマドリードでは4つのホテルが閉館しており、オテル・イングレスも同じ道を辿ることとなった。

マドリードホテル経営者協会はこのホテルの印象を「すごく伝統があり、アンティークさを享受したスタッフのいるホテル」と語っており、老舗ホテルの閉館を残念がっているようであった。

時代なのかもしれないが、ひとつ、またひとつとマドリードから古き良き歴史と伝統の薫りが消え失せてしまうのは、何とも寂しいことであろうか。

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