スペイン最古のバグパイプ工場『セイバネ』の創始者死去

ガリシア州の民族楽器「ガイタ」を生産する老舗工場『セイバネ』の創立者、ショセ・マヌエル・セイバネさんが12月27日死去した。享年90歳。

「ガイタ・ガジェーガ」は、スコットランドのバグパイプで有名なリード式の民族楽器の一つで、スペインではガリシア州やアストゥリアス州などのケルト人文化の残る地域で演奏される。コルーニャ県カンブレにあるセイバネ工場は、70年以上の歴史を持つ「最古のガイタ・ガジェーガ工場」として知られている。

9世紀頃に誕生したとされ、その後いくつもに派生したガイタの基本形は、主旋律を奏でるパイプ(プンテイロ)と、空気を溜めパイプに空気を送り出す皮袋(フォル)が付いた楽器である。ガイタ・ガジェーガはその他の地域の物と異なり、主音が2オクターブ低く設計され、中世期にガリシアの民族楽器として認知されるようになる。

その後、ガイタ・ガジェーガは、フォルの上部に「ロンコ」、右側面に「チジョン」、「ロンケタ」と、3つの低音をコントロールするパイプが配置された。この配置場所を巡っていくつものの研究と論争がありそれを経て現在の位置に装着されるようになった。

ガイタ・ガジェーガは、その長い歴史の中で教会から演奏を禁止されたこともあり、カトリック王室が支配するスペインでどんどん衰退していった。19世紀になってようやくガリシア人のアイデンティティーが復活してくると、その象徴として民衆祭りや公式の場で演奏されるようになり最盛期を向かえる。その頃のガイタ演奏者(ガイテイロ)の中には公務員並みの安定した収入を生涯得る人も出てきて、職業として社会的に絶大な地位を得る。が、1936年に始まった内戦から70年代にかけてのスペイン全体主義の中では公式の場で演奏は消え、フォークソングで少しずつ使われ始めることで徐々に民衆の中でガイタが復活し、現代に至る。

ガイタを作るのに使われる木材は主に、サクラやリンゴ、オリーブや梨の木などの果物の木が使われるが、なかでも最も伝統的なものは、チェスの駒などにも使われる“ツゲ”の木(ブーショ)で作られたガイタ・ガジェーガである。セイバネ工場ではブーショ製以外にも、ザクロの木やツルサイカチなどのココボロと呼ばれる南米の中高木などを使いガイタを生産している。

亡くなったショセ・マヌエル・セイバネさんの孫娘のスサーナさんはガイタ演奏者のなかでも著名な奏者である。

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