ガリシア芸術と文化の巨匠、ディアス・パルド氏死去

陶芸家や画家、また文化人として活躍した芸術家、イサック・ディアス・パルド氏が1月5日、ラ・コルーニャ市で死去した。享年91歳。

ディアス・パルド氏は、画家でガリシア民族主義者のカミーロ・ディアス・バリーニョ氏を父に持ち、1920年にサンティアゴ・デ・コンポステーラで生まれた。父ディアス・バリーニョ氏はスペイン内戦が始まった直後にフランコ軍によって銃殺されてしまい、ディアス・パルド氏はラ・コルーニャ市へと移り、隠れながらの生活を余儀なくされた。

その後、レタリング・デザイナー(書体デザイナー)として同市で働き始める。内戦が終わると奨学金を得て、マドリッドのサンフェルナンド芸術学院で勉強し、バルセロナのサン・ホルヘ芸術学院にて教師となる。以後、視覚芸術(ビジュアルアート)を辞めて陶芸の道へと進み、ラ・コルーニャ県サダのカストロ・デ・サモエードに陶芸工場を作る。同工場でディアス・パルド氏は、ガリシア州の伝統陶芸である『サルガデロス』を復活させる。

『サルガデロス』とは200年以上前に、ルーゴ県の工業団地サルガデロスでアントニオ・ライムンド・イバニェスが近代工業を目指すスペインで初の高炉事業を始め、総合的な製鉄の基礎を作り上げた結果、19世紀初期より生産を始めた陶磁器である。その技術力によりスペイン軍の軍艦の生産も受け持つようになり、国王より「サルガデロス王立工場」の認定を受けるが、イバニェスは1809年リバデオに入ってきたアイルランド軍に捕らえられてしまう。19世紀に様々な変革を遂げながら、進化を模索していたサルガデロスは結局、1875年に閉鎖してしまう。

そこで、ディアス・パルド氏などガリシアの芸術家や文化人はサルガデロス復活へ向け、イバニェスが残した模範を機軸に、独自性を取り入れた「新サルガデロス」を1960年代に作り上げた。サルガデロスをガリシア地方産の高級陶磁器に発展させたディアス・パルド氏は、「新サルガデロス最高の陶芸家」と言われ、2009年にスペイン政府より、芸術家の功績を称える金賞を授与された。

同士の通夜は1月6日、多くのガリシア文化人が参加する中、サンティアゴ・デ・コンポステーラのガリシア民族博物館で行われた。

ちなみに、サルガデロス社の陶磁器は、世界的料理人フェラン・アドリア氏の弟が昨年バルセロナにオープンしたバルTicketでも使われておりご存知の方もいるだろう。

ページトップへ