年の瀬も迫っているこの最中に、マドリードにあるカラバンチェル地区の墓地では、ここ数週間、墓石やキリスト像のついた十字架などの盗難が頻発するという、何とも物騒な事件が発生している。その親族たちは訴えを起こしているとのことだ。泥棒たちの盗むものは、墓石や銅やブロンズの十字架だけに止まらず、棺の取っ手、装飾品から花輪まで、持っていけるものは何でもという感じになっている。
警察発表によると、墓石が盗まれる理由は、将来納骨される人のためで、闇売買による取引が行われているという。一方、銅やブロンズを材料に使っている装飾品などは、廃品取引所などのジャンク品を取り扱っている場所で違法に販売されている。また花輪も無駄にしない。盗難のあった同日中にマフィアへと渡され、最終的にお花を取り扱う露天商の手へと行き届くシステムになっている。墓石から花輪までとは、まさに骨の髄まで吸いつくしている。
カラバンチェル地区の墓地はすでに親族から多数の訴えを受けている。しかし窃盗は止まることなく、逆にマドリード中の墓地へと飛び火していっているとのことだ。事実、2週間ほど前、国家警察の刑事は、ビカルバロの墓地から墓石についている金属製の十字架14個を取り出し、袋に入れて持ち去ろうとした容疑で4名を逮捕している。この4名のうち3名はスペイン人、1名はポルトガル人。その年齢は20歳〜38歳だった。
カラバンチェル地区はマドリードの南、ビカルバロ地区は南東と離れており、これからもっともっと多くの墓地から訴えが出てくるかもしれない。不景気というのも相まって、装飾品なども新品ではなく中古品が買われる時代がやって来ているのだろうか。日本にも昔からこの手の話はあるが、この年末にきて墓地荒らしとは、それにしてもいただけない事件である。