多額の財政赤字を抱えた中、11月20日にスペイン総選挙が行われ、最大野党の国民党(PP)の大勝利で7年半ぶりに社会労働党(PSOE)からの政権交代が実現している。この選挙を巡り、マドリードではひとつの不正が発覚している。それは「選挙権を販売」したというものだ。
この選挙権を販売した人は、マドリード出身で以前はウェイターの仕事をやっていた無職の男性。選挙日の2週間以上前からマドリードの中心部とバレンシアに広告を張り、購入者を募っていた。その広告には、「私の投票権を売ります。価格は交渉次第。イデオロギーは関係ありません。」という内容と、販売人の携帯電話番号が記載されていた。
その広告を見た人々からは多数の問い合わせがあったという。そのうちの男性一人と選挙日当日、ドン・キホーテとその作者セルバンテスの像があることで有名なマドリード中心部にあるスペイン広場(プラサ・デ・エスパーニャ)で待ち合わせ。購入を希望した男性は100ユーロのオファーを出してきた。交渉は成立し、そのまま一緒に投票所の設置されている学校に行き、投票してきたという。この販売した男性は、購入した男性との密約からか、それ以上の詳細を語ってはいなかった。
スペインの選挙法によると、謝礼金や贈り物の報酬、またはそのことを約束した人が、直接、間接問わず有権者に投票を要求したり、棄権に導いたりする行為には、逮捕や罰金180ユーロ~1,800ユーロ(約18,900円〜189,000円)の罰則が与えられることになっている。彼らのその行為は、まさにこの罰則に当てはまる。この販売した男性は罰則がある可能性について、無関心を装っていたという。
ここ15年で過去最低の失業率21.5%となっているスペインだけに、お金を稼ぐのは簡単ではないのだが、それにしても売る側も買う側も、といったところであろう。