バルセロナ旧市街にほど近いバルセロネータ港。200店ものバル、レストランが軒を連ねるこの地区は、地元の新鮮な魚介が食べられるシーフードファンにはたまらないグルメスポットだ。ところが、その素材を調達しに毎日漁に出る漁師たちは、大漁でも喜べないほどの危機に瀕している。せっかく獲った魚も、卸売市場でつくのはほとんど捨て値。地中海を共有するコスタ・ブラバ海岸の魚に高値がつく一方で、バルセロネータの魚の値段は下降の一途をたどっているのだとか。「パラモス(コスタ・ブラバ海岸の町)のエビとうちのエビは全く同じなのに!」と憤るバルセロネータの漁師たち。助けを求めようにも、市は漁港よりクルージングやホテルといったビーチリゾートへの設備投資に忙しい。そこで立ち上がったのが地元の飲食業界だった。
バルセロネータの飲食業界を中心に発足した地元商業協会は、漁業組合と連携し、新鮮で上質な地元産魚介の価値を売り込もうと“地ビール”ならぬ“地魚”ブランドのプロモーションを開始した。近い将来は厳重な品質コントロール機関を導入し、地元飲食店が素材を卸売市場から直接仕入れられるようなシステムを普及させるのだという。卸売市場に着く魚は前日の夕方から夜にかけて獲られるため、漁から数時間後には新鮮でおいしくて安い魚がテーブルに並ぶというわけだ。
漁師、飲食業界、消費者にとってうれしいこの試みだが、軌道に乗ればさらに大きなビジネスにも発展する可能性もある。有名になれば値上がりするのがブランドの宿命。ブームに火がつく前に、安くて新鮮な地魚をしっかり味わっておきたいものだ。