景気回復の兆しが見えないスペインで若者は今、都市生活より田舎での生活を選んでいる。
マドリードコンプルテンセ大学で農村社会学の教鞭をとるベンハミン・ガルシア・サンス教授によると、1950年~60年代にかけて大量の国外、国内移民が流出し、過疎化の進んだ農村部において、近年人口の増加傾向が見られるという。
2009年に実施されたスペインの国勢調査結果に基づき、農村の現状を調査した同教授の研究報告は、「新たな農村、可能性と挑戦」のタイトルで農林水産環境省から刊行されている。
若者が都市に移住せず、地元の田舎に残る傾向が強くなってきた理由には、住宅費や生活費が都市部と比較して格段に安いこと、インターネットの普及で距離を意識せず世界や仲間とのコミュニケーションがとれるようになったことなどがあげられる。また、都市から自然を求めて移り住んでくる若者の増加、外国人労働者の流入、それに伴う移民の子供の出生数の増加が、農村部の人口増に貢献している。
「1950年代、60年代、大都市では我々の誰もが“外国人”だった。今は、田舎出身の若者が大都市に行くと“外国人”だと感じる。お金がないから、物価の高い都市生活に溶け込めない、というのが一番の理由だ」と同教授は述べている。
国内の労働人口の4割は農村居住者であり、生まれた土地で仕事をしていない人でも、“故郷”の近く、「移動時間40分圏内」で就業しているケースが目立つという。