フェルナンド・ロッチが会長に就任してから20年の ビジャレアル

フェルナンド・ロッチがビジャレアルの会長に就任してから20年が経った。1997年5月15日に彼が会長になってから今日までバレンシア州にある人口5万人の小さな町は、国内はおろか世界中で耳にする。セラミック会社パメサのオーナーであるフェルナンド・ロッチは、43万2,000ユーロでクラブを買収するとクラブを1部に昇格せ、チームは欧州最高の舞台であるチャンピオンズリーグに3度も出場した。特に2005-2006シーズンには準決勝に進出したが、元アルゼンチン代表リケルメが終了間際にPKを外し、敗退した。PKを外した時に、貴賓席でフェルナンド・ロッシが両手で顔を覆い、座っている席から前のめりに倒れたシーンはスペインで何度も繰り返された。クラブにとって最も輝かしい日であり、同時に最も悲しい瞬間だった。

 フェルナンド・ロッチの8つ歳上の兄フランシスコは1994年から1997年までバレンシアの会長を務めていた。フェルナンドもバレンシアの株を持っていた。会長に就任したが、実兄にとっては構造、組織がなく、居心地も良くなく、スペインでも最も要求が厳しく複雑なスタンドのひとつであるバレンシアニスタがいるクラブに悪い思い出しか残らなかった。それを間近で見ていたにもかかわらず、フェルナンドはフットボールクラブのオーナーになることを決めた。もしかしたら兄の苦い経験が反面教師として、弟の知恵となかったのかもしれない。外野が騒がしくなく、じっくりプロジェクトを進められるクラブとしてビジャレアルを選んだ。そして舵を取るにあたりクラブを運営の土台となる組織を整えた。

 フェルナンド・ロッチはスペイン紙『マルカ』のインタビューで20年間で選手獲得やスタジアム、スポーツセンターなどへの投資で合計で1億8000万ユーロ(約221億円)を費やしてきたことを認めている。スペイン紙『エル・パイス』の報道によれば、2011-2012シーズンに2部に降格した時は、スペインのスーパーマーケットチェーン店メルカドーナの株の2,5パーセントを売却し、7400万ユーロ(約90億円)を手にし、クラブの負債解消に充てた。フェルナンド・ロッシはこのように多くの資金を投入しているが、ビジャレアルはタイトルをまだ1度も手にしていない。失敗ではないか。そう訊かれると「1部にいることが、私たちの特別なカップ戦だ」と返答し「最高なのはタイトルに届く場所に私たちがいることだ」と話した。そして「次の20年はさらに良くなるだろう」とコメントした。

 ビジャレアルはスペインでも随一の経営が安定し、かつ優秀な選手を輩出する下部組織を持つクラブだ。1部でもレアル・マドリード、バルセロナ、そしてアトレティコ・マドリードに次ぐ2番手のグループのチームとして、その地位を揺るぎないものにしている。下部組織出身者のブルーノ・ソリアーノ、マリオ・ガスパールはスペイン代表に選出され、その他にもトリゲロス、ジャウメ・コスタら多くがトップチームの主軸となっている。また「モンチがいなくても、多くの利益を移籍市場で手にしているビジャレアル」と称されるほど、良質の選手を安く買い、市場価値を上げて、高く売り出している。最近過去2シーズンでは、7500万ユーロ(約92億円)の利益を上げた。最近で言えばアトレティコ・マドリードに移籍したビエット、マンチェスター・ユナイテッドに引き抜かれたエリック・バイイー、アーセナルに移籍したガブリエウなどだ。今夏もビジャレアルのセカンドチームからトップに上がり活躍したムサッキオがミランに買われた。

 経営、移籍市場のやりくりなどビジャレアルは他にとって模範となるクラブだ。彼らはいつタイトルを勝ち取れるのだろうか。フェルナンド・ロッチは少なくともタイトルに見合うすばらしいプロジェクトを一貫して20年も続けている。

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