「MR26」という文字が赤いスパイクに刺繍されている。バルセロナのキャプテン、プジョルの新たな仕事道具だ。サッカー選手たちは自分のスパイクによく家族の名前を入れる。息子、娘の名前を刺繍する人もいれば、恋人、奥さんの名前を入れる選手もいる。しかし、プジョルが刺繍したのは身内の人でも、恋仲の人でもなかった。
「MR」とはミキ・ロケという名前のイニシャルで、「26」とはこのミキ・ロケが着けていた背番号だ。ミキ・ロケは2012年6月24日にバルセロナの病院で亡くなった、ベティスに所属していたサッカー選手。17歳の時にイングランドのリバプールと契約するなど、その将来は有望視されていた。しかし、彼は2011年に骨盤の悪性腫瘍と診断された。治療をしていたが、23歳の若さで亡くなってしまった。プジョルはその故人を偲んで、スパイクにイニシャルとベティスで永久欠番となった26を刺繍した。
プジョルとミキ・ロケはいっしょのチームでプレーしたわけではない。ミキ・ロケはカタルーニャ州出身で彼の出身地はプジョルの母親と同じ町だった。それが縁で2人はずっと前から知り合いだった。プジョルは2011年ウエンブリーでUEFAチャンピオンズリーグを優勝した時も「頑張れ、ミキ」というメッセージが入ったシャツを着ていた。入院先にもよくプジョルは駆けつけていた。またプジョルはミキ・ロケが治療を続けられるように治療費も負担していた。
プジョルにとって、ミキ・ロケは弟みたいな存在だったのだろう。そんな彼をずっと忘れたくないと思い、大切な自分のスパイクに「MR 26」と刺繍した。