『ラトンシート・ペレス』のストーリーは次の通り。
主人公のブビーの歯が抜ける。彼はこの歯を枕の下へ入れ、就寝する。その夜、ネズミのペレスが抜けた歯を回収しにやって来て、目を覚ましたブビーと友達になる。ペレスは、これから次の家に行くと言うので、ブビーは同伴させてもらうことにする。ペレスは、彼の(ネズミの)尻尾の先をブビーの鼻の中に入れ、ブビーにくしゃみをさせる。すると魔法が働いて、ブビーはたちまちネズミに変身する。
2匹は、次の家に行く前にペレスの家へ向かう。次に訪ねる子どもへのコインをとりに寄るのだ。そこで、アレナル8番地、「カルロス・プラスト」という名のケーキ屋の屋内のクッキーの空き缶の中に“ペレスの家”があると紹介される。
ペレス宅を出た後、2匹はハコメトレソ通り(現在のマドリードのカジャオ広場近く、当時は貧しい人々が住む地域だった)にある一軒の家を訪ねる。そこには、母親に見守られ眠る少年がいる。この少年の家族は、貧しさ故パンすら買えず、毛布もない寒々とした家で震えている。ペレスは、この少年の生活が少しでも惨めでなくなるように、と金貨とこの少年の抜けた歯を交換するが、ブビーは困苦に喘ぐ平民の生活ぶりに深い衝撃を受ける。
冒険から帰ったブビーは涙を目に溜めながら、母親に、なぜ世界にはこれほどの不平等が存在するのかを聞く。これに対して王妃は、「あなたには、神様がお兄さんの役割をお授けになった。あなたの役目は弟たち(臣民たち)の面倒をよく見てあげることなの。」というような事を説明して物語は完結する。
作者のコロマは、13ページという短いストーリーの中でペレスを確固としたキャラクターに仕立て、かつ、未来の王に戒めを授けたのだ。