2012年4月10日。カタルーニャ州タラゴナ県ラスケラ村に、世界中のメディアが押し寄せた。ロイターから韓国のTVまで、各国のメディアがこの人口1000人にも満たないこの小さな村に訪れた理由はひとつ。この日この場所で、「村の土地を大麻の栽培に利用するかどうか」の住民投票が行われたからである。
約130万ユーロの負債を抱えるラスケラ村のベルナット・パジサ村長は、マリファナを売買目的ではなく療法や個人の嗜好品として消費する合法団体「バルセロナ大麻個人消費協会(ABCDA)」と大麻供給契約を結び、大麻代、土地代などで村の財政健全化と雇用促進を図るプロジェクトを推進していた。(参照記事:大麻で村おこし?“マリファナ農場”に揺れる住民)2012
大麻栽培をめぐっては住民の間で賛否両論が交わされていたが、4月10日に行われた住民投票では56%にあたる554人が「大麻栽培計画」に賛成票を投じ、プロジェクトは過半数の支持を得る結果となった。パジサ村長は当初、「プロジェクトの実施のためには75%以上の住民の支持が必要。これを下回った場合、わたしは責任をとって村長を辞任する」と明言していた。開票後、村長は「これだけ多くの国の注目を浴びたのだから、目標の75%に満たなかったとはいえ、住民の希望は慎重に検討されなければならない」とコメント、住民投票が有意義だったことを強調した。
公約の支持率75%には届かなかったとはいえ、ラスケラ村が大麻栽培に踏み切る可能性はまだ断たれたわけではない。村の将来にはまだ暗雲が垂れこめているが、今回の出来事をきっかけに村が有名になったことだけは間違いない。