生き残る“伝統芸”

現在、経済危機によりマドリードでは多くの仕事が消えていっている。しかし、その影響をものともしていない仕事が存在しているのも事実である。それは、不況が始まる以前に、ほとんど絶滅していたと言ってもいい状態にあった靴磨きや理髪店のようなずっと昔から存在する仕事である。これらは客足の遠退きや収入低下についての影響をほとんど感じていない。

マドリードの中心の広場、プラサ・マヨール近辺で17年前より靴磨きの仕事を続けているミゲル・ガビーニャ氏は、「不況前から靴磨きに来ているお客さんは今も変わらず来ているよ」と話しており、不況は全く関係ないよう様子だった。その秘訣は、「価格は安いが靴を傷つけないようにしている心遣い」にあるようだ。

一方、1900年創立のマドリード最古の理髪店「エル・キンセ・デ・クチジェロス」の店主たちは、その不況を乗り越え成功している秘訣を「各お客さんに合ったサービスを提供」しているところにあるとしている。

店主の一人であるアルフォンソ・サンチドリアン氏は、「私たちはナイフと泡を用いた伝統的なシェービングの手法を提供できるというアドバンテージを持っている。しかし、それだけではなく髪型についての最新の動向も追っているんだ。私たちは非常に手頃な価格でサービスを行い、経済危機を乗り切っている」と説明。頑に昔からの手法を行うだけでなく、新しい時代に調和していくことが不可欠だとも考えている。

理髪店「エル・キンセ・デ・クチジェロス」の住所はその名の通り、クチジェロス通り15番地(※キンセはスペイン語で15)。1725年創立で世界最古のレストランとしてギネスブックにも載っているマヨール広場近くのお店「ボティン」側に位置している。

この界隈はマドリードでも古い地域になるので、マドリード旅行の際には靴磨きや周辺の歴史的レストランやバーと合わせて、その伝統を感じてみるのもおもしろいだろう。
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マドリードでも日々、おしゃれなバーやレストラン、美容室等、新しいものが立ち並んでは消えていっている。しかし靴磨きや理髪店のようにヨーロッパの古き良き香りを漂わせる“伝統芸”を提供しているところの需要は絶えなそうだ。

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