海に生きるフットボリスタの話

スペイン北部のコスタ・デ・モルテ、死の海岸と呼ばれる荒れた大西洋で漁師をしながら故郷のクラブで15年以上もプレーする選手がいる。彼の名はアントニオ・リスタ(31)。通称モリーニョは、地域リーグ2部のサッカーチーム、カマリーニャスの中心選手である。

幼少の頃からサッカーを始め、本来クラブと契約を交わすことができる年齢(16歳)に達する前から同クラブでプレーをしている。一方で、父親で同名のアントニオさん(愛称モロ)が職業とする漁師の世界にも幼い頃から夢を抱き、学校の夏休みなどには父親と海に出た。中学卒業後には漁業の専門学校に進み、本格的に海の男になる決意をする。

学業を終えたモリーニョは、父親が所有する漁船でエビやケガニの漁に出た。そして、約1年半前には、念願だった自身の船「アンタルティダ1号」を手に入れ、漁師として一人立ちすることになる。その傍ら、漁師として成長していく間もサッカーを続け、過去には別チームなどからオファーを受けた事もあったが、一貫して生まれ故郷のクラブでプレーすることにこだわり、カマリーニャスに残った。

カマリーニャスは現在、リーグ戦で2位につけ、首位のクラブ・ド・マル・デ・カイオンとタイトル争いを繰り広げている。モリーニョは今日も何時間もの間、船の上で波に揺られた後、疲れた体を奮い立たせ、エルマーナス・マリーニョスグランドへ練習に向かうのだ。

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