不況とクリスマスイルミネーション

スペインの街中が華やかなクリスマスイルミネーションで色付く12月。そんな中、アンダルシア州グラナダから約30kmにある人口7000人ほどのドゥルカルという小村の村長が思い切った決断を下し、話題となっている。今年の村内のクリスマスイルミネーションを取りやめたのだ。

というのもドゥルカル村のホセ・マヌエル・パソ村長は、本来クリスマスイルミネーションの設置等に使用する費用をイルミネーションでなく、「村の雇用創出」のために使用するというのだ。さらに、この予算に加え、なんと村長自身の一カ月分の給料全額と村役場の職員の給料一か月分の30%を雇用創りのために捻出したのだ。

ドゥルカル村は、失業問題にあえぐスペインの他の市町村の例にもれず、7000人の人口のうち実に900人(全人口の13%)が失業している。しかし今回の村長の決断により、現時点で18名の雇用の確保に成功している。仕事内容は「村内の美化清掃」。全く収入のない家庭を優先的に採用し、スペインで最も華やぐクリスマスを前に、12月12日から実施している。被雇用者は、15日間の仕事で手取り700ユーロ(約7万1400円)を稼ぐことが出来るという。

労働者の一人は言う。「村長の決断のおかげで、クリスマスを家族と過ごすことができる」。またドゥルカル村の村民は、「イルミネーションよりも大切なものがある」と語り、村長の決断を歓迎している。

パソ村長は語る。「ドゥルカル村民は職員たちの協力により、“スペインで最も美しいクリスマスイルミネーション”を心の中に描くことができるだろう」。

華やかなクリスマスイルミネーションの影で、多くのスペイン人が1年で一番大切なイベントであるクリスマスを過ごすことができないでいることを、わたしたちは忘れてはいけないだろう。

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