バルセロナの“観光テーマパーク”化に警鐘!

バルセロナにとって、観光客は“神様”である。観光客のクレジットカード使用額が市内総生産の15%を占めるというから、市の観光への依存は相当なものだ。ここ数年の深刻な不況にも関わらず、今年は昨年を16%上回る外国人観光客がバルセロナを訪れた。しかし、そんな観光都市につきものなのが、「観光客」と「市民」のジレンマだ。ローマやベネチアなど、年間を通じて観光客でにぎわう都市では、とかく市民より観光客のニーズを優先した街づくりが行われがちだ。バルセロナも決して例外ではない。ゴシック地区のピカソ美術館付近は、みやげ物のショッピングモールへと姿を変えつつある。以前は花屋が多かったランブラス通りは、すっかり大道芸人の舞台となってしまった。路地の個人商店は、国内外のフランチャイズのロゴに次々と塗り替えられている。

バルセロナが“観光テーマパーク”へと変身するのは時間の問題と見られている中、バルセロナ市役所都市計画課が「市民のための街づくり」を目指し立ち上がった。観光都市としての魅力を維持しながらも、市民が住みやすい環境を整えるというのが狙いだ。都市計画責任者であるビセンテ・グアリャルト氏は、今後のプランをこう説明している。「市の中心部はあまりにも観光客向けに商業化されてしまった。これからは、観光スポットを郊外、とくに、魅力的でありながらも市民から忘れられてしまったような地区に拡散すべきだ」

とはいえ、観光スポットを移動するとなると、インフラ施設や交通手段を整えるためにかなりの費用が必要となる。莫大な投資のモトをとるだけの勝算はあるのか。何より、教育費や衛生費が削られている現在、それだけの資金をどこから捻出するのか。こうして足踏みしている間にも、バルセロナのテーマパーク化は着実に進んでいきそうだ。

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