8月13日、バレンシア州シャティバの夏祭りで、29歳の若者が闘牛に襲われ亡くなった。“ラトン”の通称で知られるこの闘牛は、気性の荒さと“出演料”の高さで知られ、バレンシア各地で行われる闘牛大会で人気だが、この5年間で3人の犠牲者を出している。
今回犠牲となった若者は、シャティバの闘牛場で胸部を角で刺され、数メートル投げ飛ばされたあと、片足にも角による深い傷を受けた。場外に引きずられながら救出された時には既に意識がなく、病院に搬送された数分後に亡くなった。
目撃者によると、若者は闘牛祭りに参加できる状態になく、危険だからと事故前に何度も注意を受けていたという。地元テレビのCanal9が報じたところでは、その前の闘牛で大会主催者に退場を命じられ、観客席で観戦していたが、“ラトン”の登場で再び競技場に降りたという。
体重500キロ強の“ラトン”は年齢が10歳(人の年齢で約60歳)を超えており、昨夏引退間近だった。しかし、闘牛ファンと地方自治体からの熱い要望を受けて、所有者のグレゴリオ・デ・へスース氏が現役続行を決めたという。
バレンシア州の自治体は、地元の祭りへの“ラトン”誘致に、高いところでは1万5000ユーロを拠出している。今回シャティバが払ったのは1万ユーロ近く。これに対しへスース氏は、「一番高いが、(結果的に)一番安い。というのも、興行者は(ラトンが登場すれば)満場になるとわかっているから、入場料を2倍(6ユーロを12ユーロ)で販売している。必ず利益が出るし、闘牛場周辺の商売も“ラトン”効果で繁盛する」と言う。
シャティバの祭り担当議員のラモン・ビラ氏は、闘牛場で起こるすべての責任は管理会社にあるとし、アルフォンソ・ルス市長とも話し合った結果、8月20日の祭りの最終日まで、予定されている一切の闘牛イベントをキャンセルするつもりはないと発表した。