今やスペインの高級食材の一つ“ペルセーベ(Percebe)”は、日本では“亀の手”と呼ばれる希有な魚介類だ。ペルセーベは、岩に固着する甲殻類の生物でプロテインやカルシウムを含み、通常は茹でて爪の部分を割って中身を食べる。スペインで食べられるペルセーベのほとんどはガリシア産で、この漁を専門に行う漁師をガリシア語で“ペルセベイロ(Percebeiro)”と言う。ペルセーベ漁は、主に夏場に行われるのだが、波の激しい海岸で獲れるため大変危険で命を失うこともある。
ガリシア州は西に大西洋、北にピスケー湾があり、特に波が激しい北部海岸では最高級のペルセーベが獲れる。漁師は、ロープで体を海岸につなぎ、波が岩に打ち付けた直後から次の波が来るまでのわずかな間に、岩に張り付くペルセーベを獲る。より良質のものを漁獲するには荒波の日が最適のため、毎年のようにペルセベイロが波にさらわれ亡くなる事故が起きる。最高級のペルセーベが生息するラ・コルーニャ県のコスタ・デ・モルテ(死の海岸)にあるロンクード岬には、亡くなった漁師を弔う2つの十字架がある。最近では、7月30日にラ・コルーニャ市に隣接したオレイロの海岸で50歳代の漁師が波にのまれ亡くなった。
2000年3月から国によりペルセーベの出荷量がコントロールされ、漁場や漁獲量に制限が設けられたほか、漁には免許が必要になった。出荷時の成熟度も決められ、生後6ヶ月以上で全長4cm(横幅2,5cm)程度のものしか漁獲出来ない。違法に漁を行う人も少なくなく、路上でビニール袋に入ったペルセーベを売りさばく人も見かけられる。市場に出たペルセーベは、1キロ約3,000円の値段が付くものもある。