リーガ・一般

音楽隊としてメスタージャを踏んだ16歳スペイン代表

バレンシアに将来を嘱望されるセンターバックがいる。カルロス・バダルという名のスペイン人センターバックで、バレンシアのユースAに属している。彼はU-16とU-17スペイン代表歴のある16歳だ。今シーズンはバレンシアのユースチームの選手として、チャンピオンズ・ユースリーグでもプレーしていた。その彼が18節レアル・マドリード戦でメスタージャのピッチを踏んだ。選手としてではない。試合前にピッチを盛り上げる“音楽隊の一員”として、フォルンを持って、メスタージャの芝生の上を革靴で歩いたのだ。 メスタージャでは試合前にバレンシア州の各町の音楽隊がゲームの盛り上げ役を担当する。クラブの伝統だ。ピーター・リムがオーナーになってからは、チームのバスが到着する時にもその音楽でサポーターやチームを盛り上げていた。 レアル・マドリード戦当日、カルロス・バダルは出身地ビジャヌエバという町の75名の音楽隊の一員として、トップチームを応援した。スペインの世代別代表に選出されるだけあり、周りの楽器を持つ子供に比べて、身体は一際大きく、目立っていたという。 カルロス・バダルは6歳の頃から音楽教室に通っていた。サッカー選手としてもその評価は高く、スペインはもちろん、欧州の各クラブが熱視線を送るタレントだ。昨夏までディレクターだったフランシスコ・ルフェテはそんな逸材を逃さないように違約金を800万ユーロ(約10億円)に設定し、4年契約を結んでいた。 将来を嘱望される逸材は、近い将来、フォルンではなく、足にスパイクを履き、音楽隊の奏でる音に励まされ、そのクラブエンブレムを守るためにメスタージャのピッチに立つだろう。

ルカス・ペレスが止まらない

デポルティーボ・ラ・コルーニャのルカス・ペレスが止まらない。16節エイバル戦で得点を決めたスペイン人ストライカーは、通算得点数を12に伸ばした。ゴールランキングで彼の前にいるのは、バルセロナのネイマールとルイス・スアレスしかいない。クリスティアーノ・ロナウドもよりも1点多く決めているストライカーに、地元メディアのスペイン代表に招集すべきだという声は大きくなっている。 ルカス・ペレスは16節エイバル戦のゴールで6試合連続ゴールを達成し、デポルティーボ・ラ・コルーニャの伝説のストライカーに並んだ。1992-1993シーズンに6試合連続ゴールを達成したブラジル人ストライカー、ベベットだ。1994年ワールドカップ優勝メンバーはルカス・ペレスに対して「6試合連続ゴールおめでとう、ルカス・ペレス。この記録は20年以上前にデポルティーボ・ラ・コルーニャで僕が達成しただけだ。この素晴らしいチームの歴史にようこそ!」と祝福した。 デポルティーボ・ラ・コルーニャにとってはお買い得なストライカーだった。ラ・コルーニャ出身のルカス・ペレスだったが、プロフェッショナルとしてキャリアをスタートさせたのはラージョ・バジェカーノだった。その後、ウクライナに場所を移し、そしてギリシャのテッサロニキに1シーズン在籍。デポルティーボ・ラ・コルーニャは地元出身のストライカーを昨シーズンの開幕前に150万ユーロ(約1億9,000万円)を支払って獲得した。昨シーズンは21試合で6得点とサポーターから罵声を浴びることもあったが、今シーズンは開幕から好調で16試合で12得点をマーク。クラブとの間には契約は2019年まで残されており、違約金は2000万ユーロ(約27億円)に設定されている。もし冬の移籍市場で獲得を狙うクラブがあるのならば、これ以上の金額を支払わなければ、獲得はできないだろう。 27歳のストライカーはスペイン代表に招集されるだろうか。またベベットの記録を更新し、クラブ史に新たな歴史を残すのだろうか。

アルダがリネカーの名言をリメイク

12日に来年フランスで開催される「欧州選手権」の組み合わせ抽選会が行われた。出場国がこれまでの16チームから24チームに拡大され、開催される。出場枠が増えたことで、アルバニア、ウェールズ、アイスランド、スロバキア、北アイルランドと実に5チームの初出場国が参加する。 3連覇を狙うスペインはチェコ、トルコ、クロアチアと同じD組に分けられた。スペインの地元メディアは「危険なグループに入った」と分析をしている。トルコにはアルダ、クロアチアにはモドリッチ、ラキティッチ、コヴァチッチといったスペインの2大クラブで活躍する選手たちがいる。バルセロナに所属するアルダは、UEFAの大会公式ツイッターから抽選についての意見を求められると、こう返答した。 「困難な抽選になった。だけど、サッカーは22人の男が90分間ボールを追いかけ、そして最後に語るのはトルコだ。; )(笑顔のアイコン)」 アルダのこのコメントは、現役時代にバルセロナ、名古屋グランパスエイトでプレーしたイングランド人ストライカー、ゲリー・リネカーの有名なセリフを引用したものだった。 「サッカーは単純だ。22人の男が90分間ボールを追いかけ、そして最後にはドイツが勝つ。」 1986年のメキシコ・ワールドカップの得点王は、1990年のワールドカップでドイツに準決勝で敗れた後にそう語った。アルダはこの名言をベースに、アイコンをつけて、ユーモアを加えた。スペインら強豪と同居する難しいグループだが、アルダは勝ち抜けは自分たちのプレー次第だと語っている。 アルダはスペイン語を話し、このようにユーモアがある。今シーズンはFIFAの移籍禁止処分もあり、まだ公式戦に出場できていないが、シーズン後半戦で面白いコメントをするのではないだろうか。

エゴの衝突とバルセロナのトリデンテ

レアル・マドリードのスタープレーヤー、ベイルは5日に行われた14節ヘタフェ戦後のミックスゾーンでこうコメントした。「クリスティアーノ・ロナウドは世界最高の選手のひとりだ。毎シーズン、彼はそれを実証している。彼は世界最高の選手かって?それは君が考えることだよ。」 バルセロナ寄りのプレス『ムンド・デポルティーボ』や『スポルト』は、このコメントから「レアル・マドリードのロッカールームには、エゴ、自尊心の衝突がある」と書く。 かねてからレアル・マドリードの問題と指摘されるのが、クリスティアーノ・ロナウドのエゴだ。クリスティアーノ・ロナウドは、チームが勝とうが、自分がゴールを決められなければ、不平不満を態度に示す。決定機で味方が自分にパスをしなければ、罵声を直接、味方にぶつけなくても、天に向かって叫ぶ。ベイルが決定機でパスをせずにシュートをしたことに不満を示すシーンは、多くのマドリード寄りのメディア『マルカ』や『アス』でも大きく取り上げている。 チャンピオンズリーグのシャフタル・ドネツク戦でベイルがクリスティアーノ・ロナウドの得点をアシストし、ポルトガル人ストライカーがウェールズ人の手をがっしり握り、得点を祝った時に、2人のホットラインが成立したマドリードの寄りのメディアは大きく報じたが、その結束はベイルのコメントからも分かるようにそんなに強いものではないだろう。 少なくともバルセロナのトリデンテほどではない。ネイマールが「次のバロンドールはメッシが予約しているものだ」と言えば、ルイス・スアレスが「メッシがベストで、ネイマールが2番目だ」と公に発言するほど、彼らはそれぞれのタレント、パフォーマンスを尊重している。コメントだけではない。ピッチでも彼らは実証している。メッシがいない間にネイマール、ルイス・スアレスはゴールを量産しているが、メッシが帰還してからもあくまで10番を背負うアルゼンチン人が中心であるとブラジル人とウルグアイ人はピッチでも認識を示している。 一方のレアル・マドリードは、ベイルがトップ下でプレーしたいとリクエストし、フロレンティーノ・ペレス会長の後押しもあり、シーズン当初はトップ下でプレーしていたが機能しなかった。クリスティアーノ・ロナウドは、ラファ・ベニテス監督が会長の言いなりになってシステムをいじったことで自身のゴール数が低下したと不満をつのらしている。 バルセロナのトリデンテがフットボール史上に残るハイペースで得点を量産していることで、最大のライバルであるレアル・マドリードのスターアタッカーのエゴの衝突にさらに注目を集めている。 ベイルはさらにこうもコメントしていた。「僕はイングランドでさらに輝く。なぜならプレーがもっとダイレクトだからだ」 クリスティアーノ・ロナウドのエゴの強さもメディアでよく批評されるが、ベイルも大したものだ。ただある程度エゴがなければ、偉大なフットボーラーになれないのも事実だ。 ヨハン・クライフはバルセロナがネイマールを獲得した時に「ひとつの船にふたりの船頭を置くことはしない」とメッシとネイマールという2人の天才が共存するのは難しいと語った。フットボールではふたりの天才が並び立たないのは定説だった。西ドイツのオベラート、ギュンター・ネッツァー、ユーゴスラビアのストイコビッチ、サビチェビッチなどだ。しかし、バルセロナのスリートップ、3人の偉才がこのようにエゴを衝突させずにプレーし、定説をくつがえしている。そんな奇跡が起きたからこそ、彼らは史上最強と称えられるのかもしれない。

バルセロナと対戦して得る恩恵は60億円!?

コパ・デル・レイで2部B、もしくは3部グループ優勝チームが1部のチーム、特に絶大な人気を誇るバルセロナ、もしくはレアル・マドリードと当たることは、もはや宝くじを的中させるのと同じことのようだ。今シーズンのコパ・デル・レイで最大の幸運に恵まれたのは、ベスト32でバルセロナと対戦したビジャノベンセだ。 ビジャノベンセはホームで0-0、アウェーで6-1でバルセロナに敗れた。敗者となった2部B(実質3部)のチームだが、バルセロナと対戦したことで多くの恩恵を受けている。 そのひとつがクラブの普及、知名度の上昇だ。バルセロナと対戦することで注目が集まり、多くのメディアがこぞって取材をする。クラブの名前が国内はおろか、メディアを通じて、世界中に知れ渡る。仮にクラブ名をメディアで取り上げられた量だけ広告をするとなれば、地元紙『アス』の記事によれば、4600万ユーロ(約60億円)の広告費が必要だという。アセソという会社が研究で算出した。 バルセロナとの対戦が決まった10月16日の抽選の日から、11月30日のセカンドレグ2日前までにビジャノベンセ、もしくはクラブの本拠地とする町は8万4,735回以上、ニュースとなった。その広告価値は約60億円以上だ。クラブ、そしてスペインの小さいな町にとってはお金を使わないで、絶好のアピールの機会となったのだ。 セカンドレグ当日、試合後のニュースではさらに取り上げられるニュースの数は増えているだろう。バルセロナと対戦するだけで、大きな広告効果を得られる。選手たちは世界最高峰の選手たちとピッチで対峙できるという希望があり、クラブのディレクターやその町の市役所にも経済的な還元が期待できる絶好の機会となる。ニュースでバルセロナと対戦が決まった時、もう勝ち抜きの可能性は限りなく低いのでがっくり肩を落としてもいいはずなのに、ビジャノベンセの面々は誰もが宝くじに当たったように喜んでいた。この数字を聞けば、確かに彼らがあれだけ喜びのも無理はないと今は納得できる。

新年まで持つか、2人の監督の首

リーガ・エスパニョーラは今シーズン、これまでに3人の監督の首が飛んだ。1人目はラス・パルマスのパコ・エレーラ、2人目はレバンテのルカス・アルカラスだった。もう1人は昨シーズンからレアル・ソシエダを率いるスコットランド人のモイーズ監督だ。そして、この3人に続きそうな監督が2人いる。   勝ったチームはいつものように勝ち点3以上のポイントを手にすることはないが、エル・クラシコの結果は大きな影響力を持つ。レアル・マドリードのラファ・ベニテス監督は内容でも結果でもバルセロナに完敗し、その進退が取り沙汰されている。シーズン序盤、勝ち点も首位のバルセロナと6ポイント差となったが、彼の首はすでに危うい。プレシーズンからチームのパフォーマンスが守備的であると批評され、大エースであるクリスティアーノ・ロナウドとは戦い方で確執があると言われ続けてきた。火のないところに煙は立たない。少なからず、エースとの間に確執があるのだろう。 エル・クラシコでの敗戦で、その溜まったものが全て爆発してしまった。クリスティアーノ・ロナウドは、フロレンティーノ・ペレス会長に「ベニテスをとるのか、オレか」と監督の解任を迫ったと報道されている。また、退場になったイスコもベンチスタートだったことに失望を隠せなかったことを公言している。 バルセロナ戦の敗戦は、監督だけでなく、フロレンティーノ・ペレス会長の進退問題までに発展した。スタンドから会長が座る貴賓席に向かって、辞任コールが起こった。会長は会長選挙を開会する気はないと言っているが、このままトップチームがマドリディスタを満足させることができなければ、昨シーズンのバルトメウ同様に、会長選を開くことと宣言しなければ収拾がつかなくなるだろう。 たったひとつのゲームの敗戦で劇的にチームが窮地に陥る。エル・クラシコが特別なゲームなのは、こんな報道からもよく分かる。 ベニテスと共に首が危ういのが、バレンシアのヌーノ・エスピリト・サント監督だ。ヌーノが救われるのは、彼の代理人ホルヘ・メンデスの存在もあり、オーナーのピーター・リムの信頼が揺るぎないことだが、選手やバレンシアニスタに求心力はない。昨シーズンはピーター・リムと共に強豪復活の立役者として称えられたが、アマデオ・サルボ元会長、元スポーツディレクターのルフェテと対立し、2人を追い出してから彼を支持する声は少なくなってしまった。 ヌーノの過ちは監督以上の権限を求め、独裁者となったことだ。彼はディレクターになり、チームを完全に掌握しようとした。そして采配も狂った。ローテーションは機能せず、勝ち点を思うように重ねられない。さらにはインタビューのちょっとした言葉に過敏に反応し、ネグレドを冷遇した。近頃はメスタージャのホームゲームでは「ヌーノ、出て行け」の合唱がチームのチャントと共に定番の歌となっている。 はたして、チャンピオンズリーグに出場している2つの大きなクラブの指揮官は、新年を今いるベンチで迎えられるのだろうか。

11試合8得点で叩かれるクリスティアーノ・ロナウド

レアル・マドリードが敗戦すると、クリスティアーノ・ロナウドがやり玉に挙げられる。ビッククラブのエースの宿命だ。レアル・マドリードで言えば、ラウール・ゴンザレスもチームの不振で幾度となく叩かれた。ライバルクラブのバルセロナのエース、リオネル・メッシも2シーズン前はそうだった。敗戦するといつも責任を追求されるのは監督であり、そしてエースだ。 リーガ・エスパニョーラ11節セビージャ戦で、レアル・マドリードは2-3で敗れた。“エル・クラシコ”を前に両者の間には勝ち点差は3に開いた。セビージャ戦は、これまでに19得点を決めるなどロナウドにとって最も得意な対戦相手だった。しかし、このゲームではロナウドは5本のシュートを放ち、枠内は1本だけで無得点に終わった。 驚異的なペースでゴールを量産してきたロナウドだが、今シーズンは11節が終わって、8得点。昨シーズンはこの時点で18ゴールを記録していた。1試合平均1,8得点の得点力は、今シーズン1試合0,72得点だ。過去のシーズンで11節終了時に11(2010-2011シーズン)、13(2011-2012シーズン)、12(2012-2013)、11(2013-2014)、18(2014-2015)と決めてきたポルトガル人ストライカーにとっては、今の8得点は少ない。実際に2009-2010シーズンにレアル・マドリードにやってきて以来、最低の数字だ。 エースストライカーのゴールは、チームの勝敗を左右する。ロナウドが得点を決めた試合はレアル・マドリードは85パーセント勝利しており、彼が得点を決めた試合では7パーセントしか負けていない。ロナウドがゴールを決めなかった試合は56パーセントが勝利で、負け試合が19パーセントだ。 ロナウドはラファ・ベニテス監督との関係も良好ではないと言われており、カルロ・アンチェロッティを辞任させたフロレンティーノ・ペレス会長にも不満を抱いている。その結果、パリ・サンジェルマン戦後にローラン・ブランに「あなたといっしょに仕事をするのは大歓迎です」というコメントが報道されたり、インタビューでレアル・マドリード以外でキャリアを終える可能性があると示唆したことが大きな話題となった。  エスパニョール戦で1試合に5得点を奪ったとはいえ、11節終了時点で8ゴールという結果は、立派な数字だ。過去の彼の戦績に比べると確かに少なくっているが、決してスランプというほどの数字ではない。それでもチームが負けるとこのようにエースは叩かれ、移籍の噂まで出てしまう。スター選手はいい時にしろ、悪い時にしろ、注目が集まる。

カンテラ出身のスタメン定着に期待が高まる選手とは?

リーガ・エスパニョーラ10節ヘタフェ戦で、バルセロナはルイス・スアレスとネイマールの得点で勝利した。リオネル・メッシを負傷で欠くバルセロナだが、ウルグアイ代表とブラジル代表のエースが得点を決め、チームに勝ち点3をもたらした。メッシがラス・パルマス戦で負傷した後、リーガにおいてバルセロナはこの2人しか得点を決めていない。ルイス・スアレスが7点で、ネイマールが6点。2人合わせて5試合で13ゴールと、大エースの不在を全く感じさせない。 ヘタフェ戦後の地元紙は、ここ最近恒例となったルイス・スアレスとネイマールをほめ称えたが、彼らと共に負傷から復帰し、スタメンで出場したセルジ・ロベルトのことも大きく取り上げている。 セルジ・ロベルトはヘタフェ戦では2アシストを記録。その内ひとつはヒールでラストパス。ルイス・スアレスのゴールをお膳立てする記憶に残るアシストだった。 現在23歳のセルジ・ロベルトは、ルイス・エンリケ監督が指揮するバルセロナでポジションをつかみつつある。今シーズンは右サイドバックでもプレーするなど、そのポリバレント性にも注目が集まっていた。ヘタフェ戦ではミッドフィルダーとしてプレーし、2アシストという結果を残した。 バルセロナでは2008-2009シーズンのセルヒオ・ブスケツ以来、カンテラ出身でバルセロナのスタメンに定着した選手はいない。これまでの7年の間にスタメンを勝ち取れそうな選手は実際にいた。チアゴ・アルカンタラは2011-2012シーズンに2,394分ピッチに立ち、ブスケツ、シャビ、そしてイニエスタの次に中盤で起用された時間が長かった。カンテラ出身からそのままどこのチームにも移籍せずに、トップチームのレギュラーに定着した選手は近年いない。 昨夏には放出される可能性もあったが、ルイス・エンリケ監督の信頼をプレシーズンで勝ち取った。指揮官は「シャビの退団でもっとプレーする機会が増えるだろう」とセルジ・ロベルトについて、コメントしていた。実際にセルジ・ロベルトの出場機会は増え、さらに彼はその与えられたチャンスを活かし、結果を残している。 今シーズン、急成長を遂げているセルジ・ロベルト。はたして、レギュラーのつかむことができるのだろうか。

2部で使えない戦力からスペイン代表へ

ビジャレアルのマリオ・ガスパールが、スペイン代表でデビューした。10月12日に行われた欧州選手権予選ウクライナ戦で初めてフル代表選手としてプレーしたマリオ・ガスパールは決勝点も奪った。マリオ・ガスパールは「デビューするのが夢だった。さらにチームが勝利し、自分がゴールを決めた。完璧な日だ」と試合後に地元テレビに語っている。 ビジャレアルのソシオにしてみたら感慨深いゲームだっただろう。またフットボールの選手の価値を見出す難しさも感じたに違いない。なぜならほんの3年前にはマリオ・ガスパールが代表チームのサイドバックになっているなんて、想像もできなかったからだ。 リーガ首位を走るビジャレアルを指揮するマルセリーノ・ガルシア・トラル監督は2012-2013シーズンの22節からチームを指揮した。ビジャレアルは当時2部におり、チームは10位だった。ビジャレアルはサイドバックに問題を抱えており、アルバセテ出身のマリオ・ガスパールは2部でプレーする能力もないという第1印象を手にしていた。サポーターも同じだった。2010-2011シーズンにトップチームでデビューしていた彼には走り方が独特だし、トップチームで活躍できる選手ではない考えていた。マリオ・ガスパールを起用する当時の監督ガリードがなぜマリオ・ガスパールを起用するのか、理解できなかった。 しかし、今はエル・マドリガルにいるサポーターは、誰もがマリオ・ガスパールに頼もしさを感じている。数年前には考えられなかったことだ。 第一印象が悪かったマルセリーノだが、今はこう語っている。 「最も私を驚かせた選手が彼だ。リーガで最も優れたサイドバックの1人だ」 マリオ・ガスパールはサイドラインを上下するのを全く苦としない肺を持っていた。強靭なフィジカルを備えていた。マルセリーノの指導もあり、ポジショニングも良くなり、攻撃参加もより効果的になった。右サイドバックを不動のものにしたマリオ・ガスパールはチームに必要不可欠な選手となった。今シーズンは負傷者が多く、サイドバックだけでなく、センターバックでも起用されている。 11月24日で、マリオ・ガスパールは25歳になる。ほんの3年前は2部でプレーするのも疑われた選手は、25歳を目前にしてフル代表デビューを飾り、ゴールも決めた。 誰にも想像できなかったシンデレラ・ストーリーだ。

高い的中率、アトレティコ・マドリードの若手選手への投資

リーガ・エスパニョーラ第9節で、カラスコが2試合連続となるゴールを決めた。カラスコは、第8節レアル・ソシエダ戦で終了間際に得点を決めると、その翌週に行われたチャンピオンズリーグ・アスタナ戦でも攻撃をけん引し、活躍。そして第9節、リーガで最大のライバルであるバレンシア相手のゲームで決勝点を奪った。 カラスコは、今シーズンにアトレティコ・マドリードに入団した、22歳のベルギー人だ。ベルギーのゲンクの下部組織で育ち、2010年にフランスのモナコに入団。そして2012-2013シーズンにトップチームの試合にデビューし、1部昇格の立役者となる。モナコでは、シーズンで105試合20得点を記録。ベルギー代表でも各年代の代表に選出されており、2015年3月28日のキプロス諸島戦で代表デビューを飾っている。 アトレティコ・マドリードのスカウトが初めてカラスコを見たのは、2012年2月28日だった。U-19ベルギー代表としてエストニア戦でプレーし、直接フリーキックからゴールを奪っている。そのゲーム直後にそのスカウトは初めてチームにカラスコという選手の情報を上げた。その日からスカウティングを続け、若きタレントは、今ではアトレティコ・マドリードでプレーするようになった。 アトレティコ・マドリードは今夏の移籍市場で最も補強にお金を費やしたチームだ。バルセロナ、レアル・マドリードが比較的例年よりもおとなしかったので、コロンビア代表フォワード、ジャクソン・マルティネスなど、リーガで最も補強に投資したチームとなった(実際にはマンジュキッチ、アルダらを売却しており、合計するとお金はあまり使っていない)。 近年のアトレティコ・マドリードは若い外国人タレントを獲得し、その才能をディエゴ・シメオネ監督が開花させ、選手の価値を上げている。2シーズン前のジエゴ・コスタ、もしくはクルトワから、現在のチームで言えば、コレア(20歳)、ホセ・マリア・ヒメネス(20歳)、オブラク(22歳)、そしてカラスコ(22歳)だ。世界的には名前を知られていない若者のタレントをアトレティコ・マドリードは磨き、一流の選手にしている。 アトレティコ・マドリードの若い選手への投資の的中率は、ディエゴ・シメオネ監督の采配同様に、近年の躍進を語る上で欠かせない要素のひとつだ。

時代が変えたバルセロナの信条

人の気持ちは移り変わり易い。昨シーズン3冠を達成しようとバルセロナのようなビッククラブの指揮官を務める人間は、たとえ過去に偉大な実績を残そうと、結果が出なければすぐに叩かれる立場にある。試合は世界中で生中継され、会見でのコメントが一瞬にして、世界中に伝わる現代で、人々は、かつてに比べて辛抱できなくなっているのかもしれない。 どんな小さいなことでも、批評できるところがあれば、メディアは見逃さない。8節ラージョ・バジェカーノ戦でバルセロナはブラジル代表ネイマールの4得点など5-2で勝利した。ネイマールが負傷中のリオネル・メッシの代役を果たした、と称える一方、バルセロナがボールポゼッションでラージョ・バジェカーノに敗れたと指摘するメディアがあった。 3年前のヘラルド・マルティーノが指揮をしていたバルセロナはラージョ・バジェカーノにボールポゼッションで敗れた。当時のアルゼンチン人指揮官は5年ぶりに相手チームにポゼッションを上回れたことを問われると、「勝っただろう?」と返答した。 ルイス・エンリケも同じ姿勢だ。ルイス・エンリケは昨シーズン、ラージョ・バジェカーノ戦でイニエスタとシャビ・エルナンデスを起用し、ポゼッションを高めて勝利を目指した。今シーズンはイニエスタは負傷中で、シャビはもうチームにいない。ゆえに違う戦い方を選択した。結果、バルセロナは44,4パーセントで、マドリードのチームは55,6パーセントだった。そして14本のシュートを打ったのに対して、ラージョ・バジェカーノから22本のシュートを浴びた。 ルイス・エンリケはそのデータに何の感情も抱いていない。記者会見で「何を修正しなければならないんだ?」「私たちが何ポイントあるかを知っているかい?」とコメントした。また「ポゼッションが全てではない」とも付け加えた。   バルセロナはボールを保持し、自分たちが常に試合の主導権を握り、ヨハン・クライフの言葉である「美しく勝利せよ」をピッチで体現することを信条とするクラブだ。しかし、実際はクラブ、指揮官、サポーターは何よりも勝利にプライオリティを置くようになった。 昨シーズン3冠を達成したチームに「カウンターばかりで、バルセロナのフィロソフィーはどこにいったんだ?」と声高に訴える役員もサポーターもいない。皆、勝利に酔いしれていた。 勝利が全て。世界的に「美しく勝利せよ」というバルセロナのイメージが浸透しているが、辛抱強くない今の時代がクラブのポリシーをも変えてしまったようだ。バルセロナのポリシーはレアル・マドリードのそれとあまり変わらなくなってしまった。 ロマンを追求する時間を、今の時代は誰も与えてくれない。

ベンゼマはロナウド、メッシが独占する得点王を奪えるか

今シーズンのリーガ・エスパニョーラで、フランス代表カリム・ベンゼマがストライカーとして最高のスタートを切った。レアル・マドリードの得点源といえば、先日ラウール・ゴンザレスが保持していたクラブ最多得点記録を更新したクリスティアーノ・ロナウドだが、今シーズンはちょっと様相が違う。リーガにおいて、レアル・マドリードの攻撃をけん引しているのはベンゼマだ。 フランス代表ストライカーは、開幕7節で5得点を記録。1節は負傷のため欠場したので、実質6試合で5点を決めている。アトレティコ・マドリード戦でも豪快なヘディングでゴールを奪った。リーガではマラガ戦を除いて、出場した全ての試合でコンスタントにゴールを決めている。クリスティアーノ・ロナウドみたいに1試合5得点という派手さはないが、着実に得点積み重ね、チームの勝ち点獲得に毎節貢献している。 ベンゼマはレアル・マドリードに在籍してからシーズン最初の公式戦6試合で3得点以上決めたことがない。ポストプレー、アシスト、ドリブルにプレービジョンなどそのプレーは目の肥えたスペインのサッカーファンに称えられていた。 ただゴールを量産するメッシやロナウドのような、誰もが活躍をひと目で分かる結果を残してはいなかった。今シーズンはその得点力を惜しみなく発揮している。ラファ・ベニテス監督が着任した新チームで、決意を新たにしている。地元メディアに「今シーズンは20点から25点は奪いたい」と目標を公言している。このペースで得点を積み重ねていけば、その目的は達成されるだろう。もしかしたら近年はロナウドとメッシの2人だけで競われていたピチチ(得点王の意)争いにベンゼマが風穴を開けるかもしれない。

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