リーガ・一般

来シーズン1部に帰還する40歳のゲームメーカー

21日にスペインリーグ1部昇格戦プレーオフが行われ、ラス・パルマスがホームでサラゴサに2-0で勝利。1戦目を1-3で落としていたがアウェーゴールにより、ラス・パルマスが来シーズン1部昇格が決定した。 ラス・パルマスは3シーズン連続でプレーオフに挑戦しており、3度目の正直となった。特に昨シーズンは、勝てば昇格が決まるプレーオフの最後のゲームで、リードしている終盤にサポーターがピッチに侵入し、試合は中断した。その後再開したゲームでコルドバにゴールを奪われ、土壇場で昇格を逃している。どんなシナリオライターも書けないような悲劇を体験していたのだ。そんな苦しい経験を経て、実に13年ぶりの1部昇格を果たした。 来シーズンはベティス、スポルティング・ヒホン、そしてラス・パルマスが1部でプレーする。2部はレギュラーシーズン1位と2位が1部自動昇格。そして最後の一枠を争い、3位から6位の4チームがホーム&アウェーによるトーナメント形式のプレーオフを行う。4位のラス・パルマスが今シーズンはプレーオフを勝ち抜き、1部昇格の権利を手にした。 ラス・パルマスの昇格で注目を浴びるのが、元スペイン代表のフアン・カルロス・バレロンだ。デポルティーボ・ラ・コルーニャの黄金期を語る上で欠かせないゲームメーカーは、2013年に出身地であり、古巣でもあるラス・パルマスに復帰。それから2シーズン、チームを1部に昇格させたメンバーの1人となった。 1975年6月17日生まれのバレロンは現在40歳。この1部昇格が決まったゲームではベンチにはいたが、ピッチには立っていなかった。しかし、同クラブのミゲル・アンヘル・ラミレス会長は来シーズンもバレロンがチームにいることを明言した。「バレロンはもう1シーズン、私たちといることになる。なぜなら、1部の全てのスタジアムで別れを言える選手に値するからだ」。その言葉を聞いたバレロンは、「会長がそう言った、彼が全てを決めるんだ。僕にとっては最高だよ」とメディアを通じて返答している。 40歳になったバレロンが来シーズン、国内の最高カテゴリーの舞台に帰ってくる。現役最後になるであろうシーズンにどんなプレーを見せてくれるのだろうか。来シーズンのリーガ・エスパニョーラの大きな見所の1つだ。

データが裏づけるより完全な選手となったメッシ

3冠を達成したバルセロナのエース、リオネル・メッシ。昨シーズンは不調と言われたが、今シーズンはその汚名を払拭するパフォーマンスを示し、チームを国内と欧州で高みに導いた。ゴールを奪うだけでなく、アシストし、同僚を活かす術を覚え、さらに完全な選手へと変貌と遂げた。 メッシは昨シーズンと今シーズンではどう違ったのか。スペイン紙『エル・パイス』が数字を並べて紹介している。内容は、グアルディオラが指揮した2011-2012シーズン、ヘラルド・マルティーノが率いた2013-2014シーズン、そしてルイス・エンリケがベンチに座った今シーズンの3つのスペインリーグでの数字が比較されている。 メッシが最も出場時間が長ったのは2011-2012シーズンで3,628分だった。昨シーズンは2,621分で、今シーズンは3,375分だった。また最もピッチ上で長い距離を走ったシーズンも2011-2012シーズンで8,083メートルで、昨シーズンは7,356メートル、今シーズンは7,778メートルだった。最もファウルをしたシーズンも2011-2012シーズンで27、今シーズンは25だった。また得点数も2011-2012シーズンが最も多く50ゴールで、今シーズンは43得点だった。 今シーズンのメッシで過去3シーズンの中で最もいい数字はボールを奪取した回数と決定機をつくった回数だ。メッシは今シーズン、105回相手からボールを奪っている。2011-2012シーズンは77回、昨シーズンは38回だった。またゴールチャンスは今シーズン95回つくっており、2011-2012シーズンは92回、昨シーズンは75回だった。 メッシのスプリントした距離も増えた。時速21キロ以上のスピードで走った総距離は2011-2012シーズンが436,5メートル、2013-2014シーズンが375メートル、そして今シーズンは519メートルだった。トップスピードでのプレーの距離が最も長かったのも今シーズンだった。 このようにグアルディオラが指揮したシーズンのメッシと今シーズンのメッシのパフォーマンスにおいて、得点数や決定機演出の数は変わらない。唯一大きく数字が違うのは、ボールを奪取した回数だ。今シーズンは飛躍的に増えた。より完全な選手になったという印象はこのデータからも裏づけられている。 <過去3シーズンのメッシのデータ>            2011-12/ 2013-14/ 2014-15 出場時間:      3,628分/  2,621分/ 3,375分 走行距離:      8,083m/  7,356m / 7,778m ファウル数:      27回/  -     /  25回 得点数:       50得点/  -     /  43得点 ボールを奪取した回数: 77回/  38回  /  105回 ゴールチャンス演出回数:92回/  75回  /  95回 スプリント距離:   436,5m/  375m  /  519m

バルセロナの祝賀会に参加していた元R・マドリードの選手

バルセロナとレアル・マドリードは永遠のライバルだ。今シーズンは、バルセロナがリーガ・エスパニョーラ、国王杯、そしてチャンピオンズリーグを制覇し、クラブ2度目となる3冠を達成した。3冠を2度も成し遂げたチームは、フットボールの歴史において初めてだ。 一方、レアル・マドリードは序盤は好調だったが、2015年に入って全てが変わった。コンディションの低下や、モドリッチ、ハメス・ロドリゲスら負傷者が続出した。それだけでなく、アトレティコ・マドリードに大敗した直後にクリスティアーノ・ロナウドが盛大な誕生日パーティーを実施するなど、マドリディスタからブーイングを浴びたゲームもあった。しまいには、バルセロナの優勝セレモニーでピケにその誕生日パーティーを蒸し返され、笑いものにされた。バルセロナの偉業が、レアル・マドリードの来シーズンへの闘争心をかきたてることは間違いないだろう。 そんなライバル関係にある両クラブだが、チャンピオンズリーグ決勝後にベルリンの旧空港で行われた盛大な祝賀会に参加していた元レアル・マドリードの選手がいた。ドイツ代表で現在はイングランドのアーセナルに所属するエジルだ。祝賀会には2,000人の招待客がおり、その一人がエジルだった。ドイツ代表ミッドフィルダーを招待したのは、ネイマールだ。ドイツ紙『ビルド』が伝えていた。ネイマールはエジルのプレースタイルが好きで、2人の間には親交があったようだ。エジルはドイツ代表に合流する機会を利用して、シャルケに所属するドラクスラーとパーティーに参加。朝の6時まで楽しんでいたという。 エジルはレアル・マドリードに加入する前に、「小さな頃からバルセロナのファンだった。僕の夢のクラブだし、いつの日か、メッシの横でプレーしたい。」と公言していたほどだった。レアル・マドリードの選手になってからは、そういうコメントはしていないが、エジルは今でも心のどこかでバルセロナが好きなのかもしれない。

数字で見る偉大なるシャビの業績

シャビが今シーズン限りでバルセロナを退団することを発表した。シャビは1998年に当時のトップチームのオランダ人監督ファン・ハールに起用され、トップチームにデビュー。それから17シーズン、バルセロナで中心選手としてプレー。今シーズンは先発出場機会は減ったが、キャプテンとしてチームをけん引した。2015年最初のゲームでメッシとルイス・エンリケが衝突した時に仲裁に入り、タイトル獲得に向けて、チームを一丸にしたのはシャビだったと地元メディアは振り返っている。 バルセロナで残すゲームは、チャンピオンズリーグ決勝だけ。シャビが出場するかはわからないが、これまでに彼が残してきた数字を追っていきたい。 ・リーガ出場試合数505試合57得点。 ・ヨーロッパカップ戦169試合13得点。 ・国王杯70試合9得点。 ・クラブワールドカップなどその他22試合4得点。   シャビはバルセロナの選手として766試合に出場し、657試合は先発だった。バルセロナのクラブ史上、最も多く公式戦をプレーした選手であり、リーガで322勝とバルセロナで最も勝利を手にした選手でもある。また現時点ではレアル・マドリードのイケル・カシージャスと並び、最もチャンピオンズリーグでプレーした選手となった。シャビは150試合、欧州クラブ最高の舞台でプレーしている。またエスパニョールとの“ダービー”を最も経験した選手で、これまでに30試合プレーした。 獲得したタイトルはリーガ8回、スペインスーパーカップ6回、チャンピオンズリーグ3回、国王杯3回、クラブワールドカップ2回、ヨーロッパ・スーパーカップ2回。バルセロナの選手で最多タイトルを獲得した選手だ。 シャビはさらにスペイン代表で133試合12得点を記録。ワールドカップ、欧州選手権2回と代表チームでも世界王者、欧州王者に輝いている。 ストライカーではないので、ゴールというわかりやすい数字は残せていないが、出場試合数、タイトル数と誰もが目を見張る記録を残している。 2010年、スペインがワールドカップを制覇した時に、選手個人にとって最高の栄誉と位置づけられているバロンドールを勝ち取れなかったのは残念だったが、今のクレ(バルセロナファンの愛称)たちは遠い未来に孫にこう言うだろう。 「メッシがプレーするところも見た。しかも、おじいちゃんはこの眼でシャビもカンプ・ノウで見たんだよ」

シメオネのA.マドリード以上にコーナーから得点を奪ったバレンシア

最終節のアルメリア戦に勝利し、バレンシアはチャンピオンズリーグ予備予選の出場権である4位の座を確保した。常にリードされる苦しいゲームで、バレンシアはピッチでフットボールをすることができなかった。そんな苦しいゲームでチームを2度、同点に導いたのが、セットプレーだった。 1点目は、アルゼンチン代表オタメンディがヘディングで合わせて同点へ。アルゼンチン人センターバックは、今シーズン、ヘディングでの得点が6ゴール目となる。今期バレンシアのセンターバックとしてはシーズン最多得点選手で、今シーズン最もゴールを決めたディフェンダーとなった。2点目は、コーナーのサインプレーからフェグリが決めている。デ・パウルのショートコーナーを受けたガヤがクロスを送り込み、そのボールをハビ・フエゴがサイドで折り返し、最後はアルジェリア人アタッカーが詰めた。 ヌーノ・エスピリト・サント監督が率いるバレンシアは、ディエゴ・シメオネが率いるアトレティコ・マドリードとよく比較される。強度の高いプレー、激しいディフェンスの点からだ。セットプレーもこの2チームの類似点の1つだ。バレンシアは今シーズン、アルメリア戦の2得点を含めて、コーナーキックから13ゴールを奪った。1996-1997シーズンのテネリフェに並び、バレンシアは過去20年の1部リーグで、コーナーからの得点が最も多いチームの1つとなった。シメオネのアトレティコ・マドリードもセットプレーが得意と称されるが、今シーズンはコーナーからは12得点しか奪っておらず、バレンシアに1ゴール足りなかった。 バレンシアは来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を手にした。果たして、シメオネのアトレティコ・マドリードのように欧州最高峰の舞台でも結果を残せるだろうか。

鉄壁のディフェンスがリーガ王者のストロングポイント

バルセロナがリーガ・エスパニョーラを制覇した。2年ぶり23回目のタイトルとなる。アルゼンチン代表リオネル・メッシを中心にしたチームは、国王杯、チャンピオンズリーグの2つのファイナルを残しており、3冠達成の可能性も高い。 最終節を前にして優勝を決めたバルセロナ。リーガの戦績では、王者にふさわしい数字を残している。 バルセロナは37試合30勝3分4敗、勝ち点93(カンプ・ノウで48、アウェーで45ポイント)を手にした。今シーズンのバルセロナを語る上で欠かせないメッシ、ネイマール、ルイス・スアレスの“トリデンテ”を擁する攻撃では、37試合で108得点を決めた。エースのメッシは41、ネイマールは22、ルイス・スアレスは16ゴールを奪っている。 しかし、攻撃力は、最大のライバルであるレアル・マドリードが、45得点を決めているクリスティアーノ・ロナウドを中心に111得点を決めており、バルセロナを上回っている。 数字は雄弁だ。  ルイス・エンリケが率いるチームの最大の特徴は、ディフェンスの堅さにある。37試合で失点はわずかに19。さらに無失点のゲームは23試合にものぼる。ヴェルマーレン、ドウグラスら全く戦力にならない補強が批判され、シーズン途中でチームを去ったスポーツディレクターのアンドニ・スビサレッタだが、ゴールキーパーに関しては的確な補強をしたと称えられるべきだろう。チリ人とドイツ人が守るゴールマウスを見て、クラブ史上最高のゴールキーパーのビクトル・バルデスを懐かしく思うクレは少なかったはずだ。

ドローゲームのハーフタイムに生まれた“ゴラッソ”

5月2日に行われたスペインリーグ35節アトレティコ・マドリード対アスレティック・ビルバオ戦は0-0のドローに終わった。2つあった決定機(明確なPK判定を含む)が審判に認められず、ディエゴ・シメオネ監督のチームは勝ち点を2ポイント失った。ロス・コルチョネロス(Aマドリードサポーターの愛称)にとっては不満が溜まるスコアレスドローだった。 ゲームではゴールは生まれなかった。しかし、ハーフタイムではまさに“ゴラッソ”と呼ぶにふさわしい得点が生まれていた。スペインの各メディアがこぞって取り上げ、「ほとんど誰も見ていないゴラッソ(見事なゴール)」として紹介されている。 ゴールを決めたのは、友人たちからは“フォンタ”という愛称で呼ばれるアトレティコ・マドリードのサポーターだった。ハーフタイムに行われたビールメーカーが主催するPKゲームで、フォンタはゴールを狙ったが、シュートは惜しくもバーに嫌われた。 圧巻はそれからだった。 大きく宙に浮いたリバウンドをフォンタはゴールに背を向け、オーバーヘッドキックで合わせたのだ。アクロバティックなシュートは見事に決まり、それを見ていたわずかなサポーターは大きな拍手を送った。「キャプテン翼の大空翼のオーバーヘッドのようだ」と紹介するメディアもあった。 肝心のゲームはスコアレスドローに終わったが、ハーフタイムでそのゴラッソを目撃したロス・コルチョネロスはほんの少しは「今日はいいものを見た」と思って帰宅したかもしれない。

グアルディオラの5月5日と6日

ペップ・グアルディオラが5月6日に初めてカンプ・ノウのアウェーチームのベンチに座る。チャンピオンズリーグ準決勝ファーストレグは、古巣と対戦する指揮官にとっても、スタンドを埋めるバルセロニスタ、クレにとっても特別な1戦になる。多くの拍手がグアルディオラに惜しみなく送られるはずだ。 グアルディオラがカンプ・ノウの観衆に別れを告げたのは、2012年5月5日のエスパニョール戦だった。このゲームで4得点を決めたメッシは4点目の得点後に、グアルディオラに捧げた。ベンチに駆け寄り、指揮官とエースは抱擁した。 2009年5月6日にはグアルディオラが指揮するバルセロナは、チャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグ・チェルシー戦を戦っていた。スタンフォード・ブリッジでイニエスタはロスタイムに決勝への勝ち抜けを決める起死回生のミドルシュートを決めた。この得点時にグアルディオラは我を忘れて、ベンチから飛び出し、何十メートルも駆けた。これほどの感情を露わにするのは珍しい、と世界中のメディアがその映像を繰り返し流した。 グアルディオラは古巣と対戦する。上記したエスパニョール戦、チェルシー戦にいた選手で元監督が率いるバイエルン・ミュンヘンと戦うのは、ダニエウ・アウヴェス、ピケ、セルヒオ・ブスケツ、シャビ、イニエスタ、ペドロ、そしてメッシだ。彼らはいっしょにクラブ史上最高の時期を過ごした指揮官と対峙した時に何を思うのだろうか。 5月5日と6日には、奇遇にも、グアルディオラには印象的なことが多く起こっている。きっと2015年のその日もカンプ・ノウで人々の記憶に残る出来事が起こるだろう。

スペインを示すエピソード、エイバル監督の会見退席

エイバルのガイスカ・ガリタノ監督が試合後の会見を途中で中断し、引き上げてしまった。エイバルは4月26日に行われたスペインリーグ33節、アウェーでのアルメリア戦で0-2で敗れた。 そのゲーム後に行われた会見で、エイバルの指揮官は最初の2つの質問をバスク語で返答した。その後、アルメリアの地元記者がその返答に不満を漏らすと、ガイスカ・ガリタノは退席してしまった。 ガイスカ・ガリタノは最初に質問した記者がバスク語で話したので、バスク語で返答した。その時にすでにアルメリアの地元記者は不満を言うと、2つ目の質問もまたバスク語で行われ、指揮官は1つ目の返答同様にバスク語で応じた。すると地元記者の一部がまたも不満を示すと、監督はそれを見て退席してしまった。 ガリタノはバスク語を尊重しないアルメリアの記者たちに怒って、退席したのだろう。この出来事はスペインで注目を集めている。スペインではカタルーニャ州がカタロニア語(カタルーニャ語)、バレンシア州がバレンシア語、ガリシア州ではガリシア語、そしバスク州ではバスク語が話される。中には方言ではなく、公式文書、書類でも公用語として認められている。 スペインは各地域によってキャラクターが大きく違い、多様な文化を持つそれぞれの民族が集まり、1つの国として形をなしている。雨が多いガリシア州の人間と、常に太陽があり、温暖な日が続くアンダルシア州の人間のキャラクターは当然ながら違う。それはスペインの魅力の1つでもある。ただ、アルメリアの地元記者たちはその多様な文化を尊重しなかった。 同会見に同席したアルメリアのプレス担当は、1つ目と2つ目の質問の間に不満を言った地元記者に対して、このように語りかけていた。「アルメリアは6シーズンも1部におり、君たちも分かっているはずだ。バルセロナがここに来た時も最初にカタロニア語での質疑があってから、次にスペイン語で話している。もう少しリスペクトしてください。すみません、監督続けてください。」 しかし、プレス担当のこの呼びかけも虚しく、2つ目の質疑の後にも不満があがり、ガイスカ・ガリタノ監督は退席してしまった。 多様な文化があり、そこに誇りを持つ人間がいて、それに対して、その言語を尊重しない人間(またバルセロナのようなビッククラブの前ではそんな不満を示さず、エイバルのような小さいクラブに対しては不満を言う)がいる。スペインという国を示す象徴的な出来事だった。

ラキティッチはテニス選手になりたかった

昨年の全米オープン決勝で、錦織圭と決戦い、グランドスラム初優勝を達成したマリン・チリッチ。4月20日から開催されたバルセロナ・オープンのため、クロアチア人テニスプレーヤーは同街に滞在していた。 4月19日の午前中には、バルセロナのトレーニングセンターを訪ね、同胞のラキティッチと初めての対面を果たした。有名なプロスポーツ選手同士だ。もちろんお互いのことは知っていたが、直接話をするのはこの日が初めてだった。2人は1時間に渡って、会話を楽しんだ。 面白いことに幼少時代に2人はそれぞれサッカーとテニスをしていた。クロアチアのナンバー1スポーツはサッカーだ。マリッチも周りの大半の子どもとテニスをしながらも、同じようにサッカーをしていた。一方、ラキティッチもサッカーをしながら、テニスをしていた。マリン・チリッチは、その後にテニスだけに専念。ラキティッチはテニスが好きで、テニスプレーヤーになることを考えていたが、13歳の時に父親のアドバイスもあり、サッカーだけに専念することになった、というエピソードを同胞に明かした。2人のエリートのアスリートだ。その運動能力を持ってすれば、ラキティッチはテニスプレーヤーに、チリッチはサッカー選手、と今の2人の立場が全く逆でもおかしなかったのかもしれない。 ラキティッチは今シーズン、バルセロナに入団したばかりだが、もうすでに何シーズンもプレーしているかのようにすんなりと適応した。2人のゴールキーパーと共にラキティッチという新戦力も今シーズンのバルセロナの語る上で欠かせない。セビージャからやって来たクロアチア人はインタビューで「メッシがどのようにしてドリブルしているのか、イニエスタがどんな風にパスをしているのか、わからない。僕はいつもイバン・ラキティッチでいなければいけない」と語っている。周りの選手の真似でなく、チームのスタイルに適応させようとするのではなく、自分のプレースタイル、信念を貫くことがラキティッチがバルセロナで成功した秘訣なのかもしれない。

シーズン中に何度も変わる批評

選手にとって、コロコロと変わるのが、世間の評価だ。4月5日に行われた29節のグラナダ戦でレアル・マドリードは9-1で大勝した。エースのクリスティアーノ・ロナウドは9得点のうち1人で5得点を奪った。レアル・マドリードで1試合に5点を奪った選手は、2001-2002シーズンのモリエンテス以来となる。 ロナウドは2015年に入ってから、リーガにおいてサンティアゴ・ベルナベウで、PKで1ゴールしか奪っていなかった。さらにはアトレティコ・マドリード戦で大敗した後に盛大な30歳の誕生日パーティーを催したり、得点数の低下と共にその批評は大きくなるだけだった。敗れたとはいえ、“エル・クラシコ”でゴールを決めても、マドリディスタ、そしてそんなサポーターの感情、オピニオンを先導するマドリード寄りのメディアの味方は手厳しいものだった。 それが5得点を決めると一変、手の平を返したように称賛が始まる。それまで得点を奪えなかったのは、モドリッチやハメス・ロドリゲスがいなかったからという分析はそこそこに、いつものような過剰で盛大な賛美が始まる。 一方、リーガ首位を走るバルセロナは“エル・クラシコ”で手にしたリードを何とか維持している。セルタ戦ではマテューのヘディングで勝利したが、レアル・マドリード戦も含めて、ここ2試合のパフォーマンスは低調で、決して褒められたものではない。それでもゲームに勝利し、何とかリーダーの位置を守っているから批判は起こらない。負けていれば、ここ1ヵ月得点がなく、決定機を外し続けているネイマールが手の平を返されたような批評を受けることになるだろう。 バルセロナには黄金期を築いたような華麗なパス回しはもうない。今は偉大なスリートップの能力を全面に押し出すだけのフットボールだ。かつてのチームと比べるべくもなく、美しいフットボールをしているのは、むしろレアル・マドリードの方だ。それでも何も起こらないのは「結果」を残しているからだ。 どんなに美しいフットボールをしても「結果」がなければ、誰も称賛はしない。

バルセロナにとってシーズンで最も大事な一週間

バルセロナにとって、今シーズンの結果を左右する最も大事な一週間がやってきた。タイトルを制覇する上で決定的な週となる。 バルセロナは、3月18日にチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦でマンチェスター・シティと対戦。ファーストレグを1-2で勝利しているバルセロナは、優位な状況でホームにライバルチームを迎える。欧州制覇を目指す上で重要となる。 バルセロナはリーガ・エスパニョーラ27節でアウェーでエイバルに勝利。チャビ・エルナンデス、イニエスタ、マテュー、マスチェラーノを先発で起用せずに勝利し、リーガも首位のまま、22日にホームで行なわれるレアル・マドリードとの“エル・クラシコ”を迎える。 2015年になり、話題を一心に集めているのが、リオネル・メッシだ。エイバル戦で2得点を決め、ついにクリスティアーノ・ロナウドを抜いて、単独でゴールランキング首位に立った。メッシが結果を出すようになってから、ルイス・スアレス、ネイマールという3トップを組む2人の同僚もパフォーマンスも上げてきた。特に、ウルグアイ代表のストライカーは、“9番”として自分のポジションを確保。メッシを抑えればよかった昨シーズンまでのバルセロナとは違い、得点を取り戻したルイス・スアレスがいる。バルセロナでの公式デビュー戦となったサンティアゴ・ベルナベウでの“エル・クラシコ”とは全く別の顔をカンプ・ノウでは見せるだろう。また、今シーズンは、ゴールを量産するネイマールが左サイドにいる。ここ数試合は明らかにトップフォームではないが、メッシとのコンビネーションは抜群。「両雄並び立たず」にならないことを2人はピッチで実証した。 かつての華麗な中盤はなくなったが、とてつもない破壊力を誇るスリートップを全面に引き出すルイス・エンリケのバルセロナは、2つの決戦をどう乗り越えるのか。   バルセロナにとって、ルイス・エンリケにとって、勝負の時が訪れた。

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