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カタルーニャ州旗掲揚も夢じゃない?- 究極の男女平等スポーツ“コーフボール”

「Catalonia is not Spain.」 FCバルセロナがビッグマッチでプレーするたびに見られるこの横断幕。いったいカタルーニャ住民の何%が本気で「スペインからの独立」を望んでいるのかは定かではないが、サッカーやバスケットボールのスペイン代表が活躍している今、表彰式で「あれがスペイン国旗ではなくカタルーニャ州旗だったら…」と幻想するカタラニスタ(カタルーニャ主義者)は少なくない。カタラン(カタルーニャ人)がメンバーの多くを占める、ローラーホッケーや水球でさえ「スペイン代表」として統一されてしまうのだから面白くないのはごもっともだが、両者の共存は難しいのが現実だ。ところが、そこでくじけないのがカタラン気質。共存がダメなら、片方ならいいはず。スペイン代表が存在しないマイナースポーツなら、カタルーニャ代表として国際大会に出ても文句は言われるまい。 こうして生まれたのかどうかは知らないが、1984年、「コーフボール・カタルーニャ代表」が誕生した。コーフ(=オランダ語で「バスケット」)ボールとはオランダで生まれた世界唯一の男女混合球技。1902年、アムステルダムの学校教師がスウェーデンの球技「リングボール」をヒントに発案したもので、チームは男女各4人の8人で構成される。各チームはリング状のバスケットにボールをシュートして得点を競うが、「パスのみでドリブルは禁止」、「ゴールの周囲360度どこからでもシュートできる」、など独特のルールがある。1920年アントワープ五輪、1928年アムステルダム五輪ではデモ競技として導入された歴史あるスポーツで、現在59の代表が国際コーフボール連盟に加盟している。ちなみに、日本代表もちゃんと存在する。カタルーニャ代表はIOC(国際オリンピック委員会)にも正式に公認されているため、将来コーフボールが五輪種目に導入されたあかつきには、世界最大の祭典で「カタルーニャブランド」をアピールできる。1%の可能性にもかけてあらかじめ手を回しておくところが実にカタランらしい。 五輪までの道のりは長そうだが、まずは世界選手権で活躍したいところ。今年のコーフボール世界選手権は、10月24日から11月6日まで中国で開催される予定だ。 ※写真提供:federació catalana de korfbal

自転車ロードレース「ブエルタ・ア・エスパーニャ」に初の日本人選手!

スペインの夏に終わりを告げる自転車プロ・ロードレース、「プエルタ・ア・エスパーニャ」が8月20日に開幕した。第6ステージの行われた25日、テレビにアップで映し出されたのは、ゼッケン172番をつけた大会史上初の日本人、土井雪広選手(スキルシマノ所属)だった。はっきりと聞こえる「頑張れ」コール。コースの両脇にはためく日の丸の旗。この日、集団から抜け出す“逃げ”を決めた土井選手に、スペイン中の自転車ファンがエールを送ったにちがいない。 ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリアとともにグランツールと呼ばれるプエルタ・ア・エスパーニャ。フランスとイタリアでは過去に新城幸也、別府史之ら日本人選手が出場、完走を果たしたのに対し、プエルタ・ア・エスパーニャに出場した日本人は土井選手が初めてだった。本人はレース開幕前、スペインの自転車競技ファンに絶大な人気を誇るブログ「Sprint Especial」にも登場。国内外の有名選手へのインタビューを専門とするこのブログで、「大会初の日本人選手として、レースを思う存分楽しみたい」と初参加への意気込みを語っている。 土井選手がスペインで注目を浴びたのは今回が初めてではない。今年2月に行われたブエルタ・ア・アンダルシアの第4ステージで7位、8月上旬のブエルタ・ア・ブルゴスの第4ステージで9位と健闘した土井選手に対し、コアなファンはプエルタ・ア・エスパーニャへの出場も期待していたという。相性の良いスペインで、今度はどんなレースを見せてくれるのか。最終ステージの9月11日まで目が離せない。 ※写真提供:Sprint Especial

サッカー王国の挑戦: スペインで野球は普及する?

野球といえば、スペインではあまりなじみのないスポーツ。今年6月、FCバルセロナが予算削減を理由に80年の歴史を誇る野球部門の廃止を決定したのは記憶に新しい。以来、バルサ野球チームのファンをはじめ、スペイン野球リーグ所属の全チームが「バルサ存続運動」に立ち上がったが、その努力が報われることはなかった。バルサは最後のシーズンとなった今年、「スポーツはサッカーだけじゃない」のスローガンのもと55年ぶりのリーグ優勝を決めている。 マイナースポーツの意地を見せたのはバルサ野球チームだけではない。野球スペイン代表は7月30日、バルセロナで行われた欧州選手権予選決勝でスイスを破り、2012年9月にオランダで開催される本大会(2年ごとの開催)への切符を獲得した。スペイン代表は予選で、スイス、アイルランド、ハンガリー、フィンランドと対戦、全勝で1983年大会から連続15回目の本大会出場を決めている。 ヨーロッパで野球の強豪といえばオランダとイタリアだが、スペインもここ数年、ベネズエラ、キューバ、ドミニカ共和国など中南米出身選手の増加とともにレベルを上げ、欧州選手権では上位の常連となっている。一方で、最近は「チームワークの精神」を重視する野球が教育においても注目され、体育の授業に野球を導入する学校も増えている。目新しさも手伝ってか、マイナースポーツの中で野球は卓球と並んで生徒たちに人気がある科目だという。スペイン1部リーグの名門サン・ボイCBSとビラデカンスCBのホームタウン、サン・ボイとビラデカンス(両方ともバルセロナ郊外の町)では、週末ともなると野球場で試合をする子どもたちの姿が見られる。メンバー同士のかけ声、得点したときのハンドタッチ、スタンドの声援などは、日本の少年野球とどこも変わらない。 ところが、「ボールさえあればどこでもできるサッカーと違って、野球には人数、用具、スペースが必要」と、野球が遊びとして敬遠されがちであるのも事実。狭い路地での「三角ベース」、人数が足りない時の「透明ランナー」といった、ストリート野球ならではの遊び方が子どもたちの間で浸透するにはまだまだ時間がかかりそうだ。 サッカー王国スペインで野球が普及する日は来るのか。野球スペイン代表は子どもたちに夢を与えることができるのか。2012年、2016年の五輪競技から除外され、世界的に将来が危ぶまれている野球。復興のカギを握るのは、もしかするとヨーロッパの子どもたちかもしれない。

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