Mes: octubre 2015

2部で使えない戦力からスペイン代表へ

ビジャレアルのマリオ・ガスパールが、スペイン代表でデビューした。10月12日に行われた欧州選手権予選ウクライナ戦で初めてフル代表選手としてプレーしたマリオ・ガスパールは決勝点も奪った。マリオ・ガスパールは「デビューするのが夢だった。さらにチームが勝利し、自分がゴールを決めた。完璧な日だ」と試合後に地元テレビに語っている。 ビジャレアルのソシオにしてみたら感慨深いゲームだっただろう。またフットボールの選手の価値を見出す難しさも感じたに違いない。なぜならほんの3年前にはマリオ・ガスパールが代表チームのサイドバックになっているなんて、想像もできなかったからだ。 リーガ首位を走るビジャレアルを指揮するマルセリーノ・ガルシア・トラル監督は2012-2013シーズンの22節からチームを指揮した。ビジャレアルは当時2部におり、チームは10位だった。ビジャレアルはサイドバックに問題を抱えており、アルバセテ出身のマリオ・ガスパールは2部でプレーする能力もないという第1印象を手にしていた。サポーターも同じだった。2010-2011シーズンにトップチームでデビューしていた彼には走り方が独特だし、トップチームで活躍できる選手ではない考えていた。マリオ・ガスパールを起用する当時の監督ガリードがなぜマリオ・ガスパールを起用するのか、理解できなかった。 しかし、今はエル・マドリガルにいるサポーターは、誰もがマリオ・ガスパールに頼もしさを感じている。数年前には考えられなかったことだ。 第一印象が悪かったマルセリーノだが、今はこう語っている。 「最も私を驚かせた選手が彼だ。リーガで最も優れたサイドバックの1人だ」 マリオ・ガスパールはサイドラインを上下するのを全く苦としない肺を持っていた。強靭なフィジカルを備えていた。マルセリーノの指導もあり、ポジショニングも良くなり、攻撃参加もより効果的になった。右サイドバックを不動のものにしたマリオ・ガスパールはチームに必要不可欠な選手となった。今シーズンは負傷者が多く、サイドバックだけでなく、センターバックでも起用されている。 11月24日で、マリオ・ガスパールは25歳になる。ほんの3年前は2部でプレーするのも疑われた選手は、25歳を目前にしてフル代表デビューを飾り、ゴールも決めた。 誰にも想像できなかったシンデレラ・ストーリーだ。

高い的中率、アトレティコ・マドリードの若手選手への投資

リーガ・エスパニョーラ第9節で、カラスコが2試合連続となるゴールを決めた。カラスコは、第8節レアル・ソシエダ戦で終了間際に得点を決めると、その翌週に行われたチャンピオンズリーグ・アスタナ戦でも攻撃をけん引し、活躍。そして第9節、リーガで最大のライバルであるバレンシア相手のゲームで決勝点を奪った。 カラスコは、今シーズンにアトレティコ・マドリードに入団した、22歳のベルギー人だ。ベルギーのゲンクの下部組織で育ち、2010年にフランスのモナコに入団。そして2012-2013シーズンにトップチームの試合にデビューし、1部昇格の立役者となる。モナコでは、シーズンで105試合20得点を記録。ベルギー代表でも各年代の代表に選出されており、2015年3月28日のキプロス諸島戦で代表デビューを飾っている。 アトレティコ・マドリードのスカウトが初めてカラスコを見たのは、2012年2月28日だった。U-19ベルギー代表としてエストニア戦でプレーし、直接フリーキックからゴールを奪っている。そのゲーム直後にそのスカウトは初めてチームにカラスコという選手の情報を上げた。その日からスカウティングを続け、若きタレントは、今ではアトレティコ・マドリードでプレーするようになった。 アトレティコ・マドリードは今夏の移籍市場で最も補強にお金を費やしたチームだ。バルセロナ、レアル・マドリードが比較的例年よりもおとなしかったので、コロンビア代表フォワード、ジャクソン・マルティネスなど、リーガで最も補強に投資したチームとなった(実際にはマンジュキッチ、アルダらを売却しており、合計するとお金はあまり使っていない)。 近年のアトレティコ・マドリードは若い外国人タレントを獲得し、その才能をディエゴ・シメオネ監督が開花させ、選手の価値を上げている。2シーズン前のジエゴ・コスタ、もしくはクルトワから、現在のチームで言えば、コレア(20歳)、ホセ・マリア・ヒメネス(20歳)、オブラク(22歳)、そしてカラスコ(22歳)だ。世界的には名前を知られていない若者のタレントをアトレティコ・マドリードは磨き、一流の選手にしている。 アトレティコ・マドリードの若い選手への投資の的中率は、ディエゴ・シメオネ監督の采配同様に、近年の躍進を語る上で欠かせない要素のひとつだ。

時代が変えたバルセロナの信条

人の気持ちは移り変わり易い。昨シーズン3冠を達成しようとバルセロナのようなビッククラブの指揮官を務める人間は、たとえ過去に偉大な実績を残そうと、結果が出なければすぐに叩かれる立場にある。試合は世界中で生中継され、会見でのコメントが一瞬にして、世界中に伝わる現代で、人々は、かつてに比べて辛抱できなくなっているのかもしれない。 どんな小さいなことでも、批評できるところがあれば、メディアは見逃さない。8節ラージョ・バジェカーノ戦でバルセロナはブラジル代表ネイマールの4得点など5-2で勝利した。ネイマールが負傷中のリオネル・メッシの代役を果たした、と称える一方、バルセロナがボールポゼッションでラージョ・バジェカーノに敗れたと指摘するメディアがあった。 3年前のヘラルド・マルティーノが指揮をしていたバルセロナはラージョ・バジェカーノにボールポゼッションで敗れた。当時のアルゼンチン人指揮官は5年ぶりに相手チームにポゼッションを上回れたことを問われると、「勝っただろう?」と返答した。 ルイス・エンリケも同じ姿勢だ。ルイス・エンリケは昨シーズン、ラージョ・バジェカーノ戦でイニエスタとシャビ・エルナンデスを起用し、ポゼッションを高めて勝利を目指した。今シーズンはイニエスタは負傷中で、シャビはもうチームにいない。ゆえに違う戦い方を選択した。結果、バルセロナは44,4パーセントで、マドリードのチームは55,6パーセントだった。そして14本のシュートを打ったのに対して、ラージョ・バジェカーノから22本のシュートを浴びた。 ルイス・エンリケはそのデータに何の感情も抱いていない。記者会見で「何を修正しなければならないんだ?」「私たちが何ポイントあるかを知っているかい?」とコメントした。また「ポゼッションが全てではない」とも付け加えた。   バルセロナはボールを保持し、自分たちが常に試合の主導権を握り、ヨハン・クライフの言葉である「美しく勝利せよ」をピッチで体現することを信条とするクラブだ。しかし、実際はクラブ、指揮官、サポーターは何よりも勝利にプライオリティを置くようになった。 昨シーズン3冠を達成したチームに「カウンターばかりで、バルセロナのフィロソフィーはどこにいったんだ?」と声高に訴える役員もサポーターもいない。皆、勝利に酔いしれていた。 勝利が全て。世界的に「美しく勝利せよ」というバルセロナのイメージが浸透しているが、辛抱強くない今の時代がクラブのポリシーをも変えてしまったようだ。バルセロナのポリシーはレアル・マドリードのそれとあまり変わらなくなってしまった。 ロマンを追求する時間を、今の時代は誰も与えてくれない。

ベンゼマはロナウド、メッシが独占する得点王を奪えるか

今シーズンのリーガ・エスパニョーラで、フランス代表カリム・ベンゼマがストライカーとして最高のスタートを切った。レアル・マドリードの得点源といえば、先日ラウール・ゴンザレスが保持していたクラブ最多得点記録を更新したクリスティアーノ・ロナウドだが、今シーズンはちょっと様相が違う。リーガにおいて、レアル・マドリードの攻撃をけん引しているのはベンゼマだ。 フランス代表ストライカーは、開幕7節で5得点を記録。1節は負傷のため欠場したので、実質6試合で5点を決めている。アトレティコ・マドリード戦でも豪快なヘディングでゴールを奪った。リーガではマラガ戦を除いて、出場した全ての試合でコンスタントにゴールを決めている。クリスティアーノ・ロナウドみたいに1試合5得点という派手さはないが、着実に得点積み重ね、チームの勝ち点獲得に毎節貢献している。 ベンゼマはレアル・マドリードに在籍してからシーズン最初の公式戦6試合で3得点以上決めたことがない。ポストプレー、アシスト、ドリブルにプレービジョンなどそのプレーは目の肥えたスペインのサッカーファンに称えられていた。 ただゴールを量産するメッシやロナウドのような、誰もが活躍をひと目で分かる結果を残してはいなかった。今シーズンはその得点力を惜しみなく発揮している。ラファ・ベニテス監督が着任した新チームで、決意を新たにしている。地元メディアに「今シーズンは20点から25点は奪いたい」と目標を公言している。このペースで得点を積み重ねていけば、その目的は達成されるだろう。もしかしたら近年はロナウドとメッシの2人だけで競われていたピチチ(得点王の意)争いにベンゼマが風穴を開けるかもしれない。