ベティスのクラブ史に「ラ・キンタ・デ・ファビアン」は刻まれるか

 ベティスが好調だ。29節を終えて、勝点43で8位につけ、5、6位に与えられるヨーロッパリーグ出場権を争っている。現在5位のビジャレアルが勝点47、6位セビージャが45、7位ジローナが43と激しいデッドヒートが続く。リーガは残り9節だが、まさに毎試合が“決勝戦”だ。

 チームの戦績もさることながら、ベティコは今シーズンの愛する我がチームに大きな魅力を感じているに違いない。人々を魅了する要素は多い。キケ・セティエン監督がけん引するポゼッションに重きを置いたフットボール、チームが示すクオリティ、そしてチームの顔である36歳のベテラン、ホアキンの決定的なプレー。ベティコはこれだけでも幸せなのに、シーズン終盤にチームはさらに新たな魅力を提供している。下部組織出身の若いタレントのプレーだ。

 スペイン紙「マルカ」はチームの中軸を担うベティコのカンテラを「ラ・キンタ・デ・ファビアン」と名付けた。1980年代、レアル・マドリードはプトラゲーニョを中心に、ミチェル、マルティン・バスケス、パルデサ、サンチスの下部組織出身の選手が中軸となり、1985年からリーガ5連覇を果たした。キンタとは5人、ブイトレとはハゲワシという意味で、プトラゲーニョのニックネームだ。「プトラゲーニョを中心にした下部組織出身の5人の精鋭部隊」を意図するフレーズは、1980年代のレアル・マドリードを示す標語となった。そして2018年、ベティスに「ラ・キンタ・デ・ファビアン」が生まれようとしている。5人の下部組織出身者が、近い将来ロス・ベルディブランコスの核となりそうだ。

 きっかけはファビアンだ。

 ファビアンは、29節エスパニョール戦で、ベティスの選手として公式戦50試合目をプレーした。21歳のファビアンは、189センチあるスケールの大きなミッドフィルダーで、15試合連続でスタメン出場を果たしている。欧州のビッククラブが狙う逸材で、チームは今年1月31日に2023年まで契約延長を合意させ、違約金を3000万ユーロ(約39億円)に設定し直した。ファビアンはベテランのホアキンと共に誰もが認める現チームのリーダーの1人だ。彼のパフォーマンスが、テクニカルスタッフの目を下部組織に向けさせた。

 ファビアンと同じく1996年生まれで下部組織出身のフランシスも、右サイドバックの定位置を確保しつつある。今シーズンからトップチームでプレーするフランシスは、リーガですでに13試合出場している。

 21歳のジュニオールは誰もが期待していたわけではなかったが、左サイドで大いにその存在感を発揮している。リーガで初めて得点を決めたドミニカ人となったジュニオールは今シーズンは7試合に出場し、2アシストを記録した。
 
 ストライカーのロレンは、7試合で5ゴールを記録。ファビアンよりも3歳上だが、下部組織出身のストライカーは今シーズンまさにブレイクを果たした。

 この4人はトップチームに定着している。ベティスには将来有望な若手が出現してきており、キケ・セティエンは実力があれば、年齢に関係なくピッチに送り出す。指揮官のキャラクターもあり、ラファ・ナバーロ、フリオ・ガルシア、ロベルト、レドル、ヒノホサ、アイトール、カプトムの誰かが5人目となるのは確実だ。

 ファビアンを始め、彼らはまだキャリアを歩み始めたばかりだ。定位置を確保するだけではなく、加えてチームを勝利に導かなければいけないが、まだ力不足なのは明白だ。ファビアンを始め、5人の若手が今までのように進化し、クラブ史に「ラ・キンタ・デ・ファビアン」と後世まで語り継がれる結果を残せるだろうか。ベティコの明るい未来は、彼らが握っている。

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