スペイン第3のクラブ、アトレティコ・マドリードを追いかけるエスパニョール

ペリコは言う。

「アトレティコ・マドリードのようにエスパニョールもできるはずだ」

 アトレティコ・マドリードとエスパニョールはそれぞれ自分たちの本拠地に巨大なライバルを抱えている。スペインだけでなく、欧州も席巻する2大クラブ、レアル・マドリードとバルセロナだ。6月22日付のスペイン紙『アス』によれば、レアル・マドリードは2016-2017シーズンの年間予算は6億3100万ユーロ(約787億円)、バルセロナは6億9500万ユーロ(約865億円)だった。その規模はリーガの他クラブと比較にならないほど大きい。

 アトレティコ・マドリードはリーガ制覇、2度のチャンピオンズリーグファイナリストになるなど近年結果を残し、予算も大きくなった。2011-2012シーズンは1億2980万ユーロ(約162億円)だったのが、2016-2017シーズンは2億6610万ユーロ(約332億円)で、来シーズンはクラブ史上初めて3億ユーロ(約374億円)を突破し、3億2000万ユーロ(約400億円)近くになるだろうと報道されている。

 アトレティコ・マドリードは昨冬同様に今夏も18歳以下の選手登録違反により、FIFAにより移籍による補強活動を禁止されている。冬までは現状の戦力で戦えなければいけないが、エースのフランス代表グリーズマン、スペイン代表コケとの契約延長に合意し、来るべき新シーズンに向け、主力の放出を阻止した。また欧州のビッククラブからオファーが届くサウール、オブラクに対しても、給与をアップさせ、残留に動いている。さらには補強禁止処分が解ける冬に向けて、チェルシーのディエゴ・コスタ、マラガのサンドロと交渉中と報道された。それもこれも、アトレティコ・マドリードには予算があるからだ。来シーズンはトップチームのメンバーに、予算の60パーセントに当たる1億8000万ユーロ(約225億円)が割かれる。

 レアル・マドリード、バルセロナの次に続くリーガ3位の座を狙ってアトレティコ・マドリードは、セビージャ、バレンシア、ビジャレアル、アスレティック・ビルバオと争ってきたが、予算の面では今やそのライバルたちから完全に頭ひとつ抜けた。2016-2017シーズンの予算ではアトレティコ・マドリードの次に多かったのは、セビージャで1億4300万ユーロ(約168億円)だった。アトレティコ・マドリードの約半分だ。マドリードのもうひとつのクラブは、スペインで第3のクラブの地位を定位置にしつつある。
 
 そんなアトレティコ・マドリードを見て、ペリコは言った。

 エスパニョールは2016年1月に中国企業ラスター・グループが買収し、チェン・ヤンシェンが会長の座についた。ペリコは中国人を称える。なぜなら負債によって、補強に首が回らず、1部残留の常連だったクラブに対して、1億5000万ユーロ(約187億円)を投資し、クラブの経営を安定させたからだ。中国人会長になってから、スポーツ面では1部残留争いから欧州カップを争うようになり、経営面でも負債を着実に減らしている。2020年には負債がなくなるだろうと予想されている。急激にでははなく、徐々にクラブを強化していくという現実的なプロジェクトにもペリコは好感を抱いている。人事でもクラブをよく知る人間を抜擢し、スポーツ面でも今ある予算の身の丈に合った人災を補強し、着実にチームを強化している。ゆえに数年後、エスパニョールもアトレティコ・マドリードのようになれるのではないか。ペリコの希望は日々大きくなっている。その希望は数字で示されつつある。来シーズンに向けて、年間シートの更新を受付を始めたが、開始からわずか3日間で3,000人が更新した。新シーズンの年間シート購入者数はクラブ史上最高の数になるだろうと地元メディアは予想している。

“エル・クラシコ”が行われる節は、同時に必ずアトレティコ・マドリード対エスパニョールが組まれた。だが、近い未来に“裏クラシコ”と揶揄されるカードはチャンピオンズリーグ出場権、もしくは優勝争いでポイントとなる注目度が高い試合となり、“エル・クラシコ”とは違う節に組まれるのが当たり前となるだろう。

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