エゴの衝突とバルセロナのトリデンテ

レアル・マドリードのスタープレーヤー、ベイルは5日に行われた14節ヘタフェ戦後のミックスゾーンでこうコメントした。「クリスティアーノ・ロナウドは世界最高の選手のひとりだ。毎シーズン、彼はそれを実証している。彼は世界最高の選手かって?それは君が考えることだよ。」

バルセロナ寄りのプレス『ムンド・デポルティーボ』や『スポルト』は、このコメントから「レアル・マドリードのロッカールームには、エゴ、自尊心の衝突がある」と書く。

かねてからレアル・マドリードの問題と指摘されるのが、クリスティアーノ・ロナウドのエゴだ。クリスティアーノ・ロナウドは、チームが勝とうが、自分がゴールを決められなければ、不平不満を態度に示す。決定機で味方が自分にパスをしなければ、罵声を直接、味方にぶつけなくても、天に向かって叫ぶ。ベイルが決定機でパスをせずにシュートをしたことに不満を示すシーンは、多くのマドリード寄りのメディア『マルカ』や『アス』でも大きく取り上げている。

チャンピオンズリーグのシャフタル・ドネツク戦でベイルがクリスティアーノ・ロナウドの得点をアシストし、ポルトガル人ストライカーがウェールズ人の手をがっしり握り、得点を祝った時に、2人のホットラインが成立したマドリードの寄りのメディアは大きく報じたが、その結束はベイルのコメントからも分かるようにそんなに強いものではないだろう。

少なくともバルセロナのトリデンテほどではない。ネイマールが「次のバロンドールはメッシが予約しているものだ」と言えば、ルイス・スアレスが「メッシがベストで、ネイマールが2番目だ」と公に発言するほど、彼らはそれぞれのタレント、パフォーマンスを尊重している。コメントだけではない。ピッチでも彼らは実証している。メッシがいない間にネイマール、ルイス・スアレスはゴールを量産しているが、メッシが帰還してからもあくまで10番を背負うアルゼンチン人が中心であるとブラジル人とウルグアイ人はピッチでも認識を示している。

一方のレアル・マドリードは、ベイルがトップ下でプレーしたいとリクエストし、フロレンティーノ・ペレス会長の後押しもあり、シーズン当初はトップ下でプレーしていたが機能しなかった。クリスティアーノ・ロナウドは、ラファ・ベニテス監督が会長の言いなりになってシステムをいじったことで自身のゴール数が低下したと不満をつのらしている。

バルセロナのトリデンテがフットボール史上に残るハイペースで得点を量産していることで、最大のライバルであるレアル・マドリードのスターアタッカーのエゴの衝突にさらに注目を集めている。

ベイルはさらにこうもコメントしていた。「僕はイングランドでさらに輝く。なぜならプレーがもっとダイレクトだからだ」

クリスティアーノ・ロナウドのエゴの強さもメディアでよく批評されるが、ベイルも大したものだ。ただある程度エゴがなければ、偉大なフットボーラーになれないのも事実だ。

ヨハン・クライフはバルセロナがネイマールを獲得した時に「ひとつの船にふたりの船頭を置くことはしない」とメッシとネイマールという2人の天才が共存するのは難しいと語った。フットボールではふたりの天才が並び立たないのは定説だった。西ドイツのオベラート、ギュンター・ネッツァー、ユーゴスラビアのストイコビッチ、サビチェビッチなどだ。しかし、バルセロナのスリートップ、3人の偉才がこのようにエゴを衝突させずにプレーし、定説をくつがえしている。そんな奇跡が起きたからこそ、彼らは史上最強と称えられるのかもしれない。

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