夏の納涼(?)イベント「全裸レース」

バルセロナの北東約20kmにある地中海岸の町プレミア・デ・マルは、毎年7月の夏祭りの時期になると、あるユニークなイベントで全国の注目を浴びる。そのイベントとは「Cursa a pèl」(裸レース)。名前のとおり、全裸で真夜中の街を走り抜けるレースだ。参加条件は、“スッポンポンで走ること”。もちろん、シューズは履いてもいい。第11回目を迎える今年は、7月14日(日)の午前2時30分からスタート。スポンサーであるアイスクリームショップの提供するリュックを持って、中心街の広場からビーチまでの約1マイル(約1.6km)を駆け抜ける。そのままビーチに飛び込むもよし、ゴールと同じ舞台で開催されるコンサートを楽しむもよし。老若男女が様々な色の肌を夜風にさらして走る姿はなんとも涼しげだ。

このレースが初めて開催されたのは今からちょうど10年前の2003年だった。同市の住民トニ・エストラデール氏が、テレビでオーストラリアの裸レースのドキュメンタリーを観て、同じようなイベントを地元でやれないかと考えたのがきっかけだった。当時の夏祭りの実行委員で、市議会議員のアントニオ・グティエレス氏は、ラ・バングアルディア紙とのインタビューで初回の開催についてこう説明している。「レースはナチュラリズムやヌーディズムとは全く関係ありません。ただ、祭りを楽しくしたい、というのが目的です」

実はその前年、プレミア・デ・マルという地名はある出来事がきっかけで全国に知られることになった。イスラム系移民の多く住むこの町で、モスクの建設をめぐって賛成派と反対派が衝突し、大々的なデモが行われたからだ。結局モスクは建設されず、町には「異文化を尊重しない町」とのレッテルが貼られてしまった。当時の市議会議員キム・カイメル氏は、同紙とのインタビューで、裸レースが町の汚名返上に一役買ったとの見解を述べている。「裸レースは革新的でクリエイティブ。異なる文化や考え方に寛容なイベントだ。おかげで、プレミアの名がポジティブな意味でニュースに出ることになった」

初回の参加者数は300人。その後も参加者数は500~600人に上り、今やすっかり名物レースとなった。今年の宣伝には、「野次馬も大歓迎!道を照らすのは君たちの懐中電灯だ!」とのメッセージも。スッポンポンの群衆が快走する姿は、きっと暑さを忘れさせてくれることだろう。

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