“脱・騒音公害都市”への道 ~バルセロナで前代未聞のテラスブーム~

ヨーロッパ有数の騒音公害都市バルセロナで、ある騒音対策が注目され始めている。カフェやバルの屋外に設置されているテラスが、騒音防止に一役買っているというのだ。路上で飲食客が一斉におしゃべりする方がよっぽど近所迷惑になりそうなものだが、テラスには意外な効果が隠されていたようだ。

事の発端は、今年スペインに導入された禁煙新法。この法律により公共の場における屋内での喫煙が禁止されて以来、“喫煙客離れ”を恐れたレストラン、バル、カフェはこぞって屋外にテラスを設置した。地元紙『ラ・バングアルディア』によると、2011年上半期に市役所が許可したテラス設置申請は、昨年の62.7%増の1465件。この他、法定基準に満たないという理由で却下された申請は564件に上る。市役所によると、テラスの急増とともに、ここ最近路上にたむろするスモーカーが減少したのはもちろん、これまで公園、広場、一般住居の入り口付近に群れて飲酒や放尿(!)をしていた“招かれざる集団”も、徐々にテラスへ流れ始めているという。バルやカフェのテラスなら、テーブルもあればトイレもある。どのテラスも一定の環境・公安・衛生基準をクリアして初めて設置が許可されるため、耐えがたいような騒音が住民に届く可能性も低い。その証拠に、市民の騒音に対する苦情件数はここ3カ月で7.1%減少しているという。

おしゃべりのトーンがひときわ高いことで知られるスペイン人。「うるさい国スペイン」というレッテルを拭うべく、市役所は「叫ばなくてもいいんだよ」をスローガンに騒音公害防止キャンペーンも開始したばかりだ。冗談みたいな話だが、俳優やパントマイム・アーティストが市内を練り歩き、「わめかなくても、あなたの声は聞こえます」というメッセージを通りの人々に送るのだという。

テラスが増えれば騒音が減る。設置申請費で市の金庫も潤う。路上のゴミも減る。ついでにスペイン人も少し静かになる(?)。テラスブームの効果は本物なのか。真偽を確かめるために、騒音計も設置してみてはどうだろうか…。

ページトップへ