サッカー王国の挑戦: スペインで野球は普及する?

野球といえば、スペインではあまりなじみのないスポーツ。今年6月、FCバルセロナが予算削減を理由に80年の歴史を誇る野球部門の廃止を決定したのは記憶に新しい。以来、バルサ野球チームのファンをはじめ、スペイン野球リーグ所属の全チームが「バルサ存続運動」に立ち上がったが、その努力が報われることはなかった。バルサは最後のシーズンとなった今年、「スポーツはサッカーだけじゃない」のスローガンのもと55年ぶりのリーグ優勝を決めている。

マイナースポーツの意地を見せたのはバルサ野球チームだけではない。野球スペイン代表は7月30日、バルセロナで行われた欧州選手権予選決勝でスイスを破り、2012年9月にオランダで開催される本大会(2年ごとの開催)への切符を獲得した。スペイン代表は予選で、スイス、アイルランド、ハンガリー、フィンランドと対戦、全勝で1983年大会から連続15回目の本大会出場を決めている。

ヨーロッパで野球の強豪といえばオランダとイタリアだが、スペインもここ数年、ベネズエラ、キューバ、ドミニカ共和国など中南米出身選手の増加とともにレベルを上げ、欧州選手権では上位の常連となっている。一方で、最近は「チームワークの精神」を重視する野球が教育においても注目され、体育の授業に野球を導入する学校も増えている。目新しさも手伝ってか、マイナースポーツの中で野球は卓球と並んで生徒たちに人気がある科目だという。スペイン1部リーグの名門サン・ボイCBSとビラデカンスCBのホームタウン、サン・ボイとビラデカンス(両方ともバルセロナ郊外の町)では、週末ともなると野球場で試合をする子どもたちの姿が見られる。メンバー同士のかけ声、得点したときのハンドタッチ、スタンドの声援などは、日本の少年野球とどこも変わらない。

ところが、「ボールさえあればどこでもできるサッカーと違って、野球には人数、用具、スペースが必要」と、野球が遊びとして敬遠されがちであるのも事実。狭い路地での「三角ベース」、人数が足りない時の「透明ランナー」といった、ストリート野球ならではの遊び方が子どもたちの間で浸透するにはまだまだ時間がかかりそうだ。

サッカー王国スペインで野球が普及する日は来るのか。野球スペイン代表は子どもたちに夢を与えることができるのか。2012年、2016年の五輪競技から除外され、世界的に将来が危ぶまれている野球。復興のカギを握るのは、もしかするとヨーロッパの子どもたちかもしれない。

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